「天猫国際」と「JD.com(京東)」のデータ分析:JDはデジタル家電商材に強かった!
2016年も中国のEC市場は大きく盛り上がった。その中でも中国人が海外から商品を調達する越境ECモールは大きく成長したと言われている。今回はその中でも中国最大のショッピングモールサイト天猫(Tmall)の越境ECプラットフォームである「天猫国際(Tmall国際)」と、現在急成長中であり、天猫に次ぐ売上を誇るJD.com(ジンドン)の越境ECプラットフォームである「JD Worldwide」の2016年の年間データを分析する。
年間売上高
2016年の両モールの総売上は、Tmall国際がJD Worldwideの約1.5倍となっている。TmallとJD.comではより大きな差がついていると予測されるが、越境ECプラットフォームに限定すると、JD JD Worldwideは比較的善戦していると見てとれる。
次に2016年の両モールの月次の売上推移を見ていく。
独身の日(W11)のある11月で大きな差がついており、11月と12月を除けは両モールの売上高の差はほとんどないことから、TmallにとってW11はいかに影響力が大きなイベントか読み取れるグラフとなっている。W11のある11月以外の売上平均と比べると11月の売上は約5倍に達している。
またJD Worldwideは6月の売上がTmall国際を大きく上回っている。これはJD.comが6月18日にアニバーサリー記念セールを実施している影響だ。アニバーサリー記念セールのある6月以外の売上平均と比べると6月の売上は約1.5倍となっている。アニバーサリー記念セールはTmallで行われている独身の日のようには定着はしておらず、売上の伸びは限定的となっている。
カテゴリ別売上高
次に越境ECモールの両サイトのカテゴリ別売上高を比較してみてみる。
越境ECモールの両サイトの上位を比較してみると、Tmall国際は1位から順に美容関連、食品/健康、マタニティ/ベビー。JD Worldwideは1位から順にマタニティ/ベビー、デジタル製品/家電、美容関連である。美容関連、マタニティ/ベビーといったカテゴリは両サイトで人気を博しているようだ。また、上位4位まででTmall国際は86.7%、JD Worldwideは81.4%となっており、上位のカテゴリに売上が集中していることがわかる。
JD.comが電子機器販売から開始されたサービスのため、JDというと家電系のイメージが消費者に強いようだ。
下位を見ていくと、Tmall国際では最下位の自動車部品がJD Worldwideでは8位であるなど、JD Worldwideでは、デジタル製品/家電や自動車部品といった商品単価が高いカテゴリが上位にきている。
店舗別売上高
次に越境ECモールの両サイトの店舗別の売上高を見ていこう。
2016年の両サイトにおける売上上位10店舗をピックアップした。両サイトの売上を見ると1位の店舗の売上は2位以下を引き離しており、Tmall国際では2位の1.5倍、JD Worldwide では2位の約2.6倍の売上を誇っている。また、商品カテゴリを見るとTmall国際では、8位のスニーカーを除きTmall国際全体の売り上げれ上位3カテゴリを取り扱っている店舗が独占している。一方でJD Worldwideでは5位の車関連、8位の食品関連と若干の散らばりを見せている。さらにTmall国際ではメーカーECモールが4サイトランクインしているが、JD Worldwideでは全て小売店舗となっている。
次は上位カテゴリの店舗ランキングを見ていこう。
2016年の両サイトにおける売上上位カテゴリのうち、共通する2カテゴリである美容関連とマタニティ/ベビーの売上上位10店舗を比較したランキングである。
美容関連
まずは美容関連から見ていく。両者を比較し、明確に違う点はJD Worldwideの1位店舗の売上の高さだ。2位との差でみていくと、Tmall国際の1位の店舗の売上が2位の約1.3倍なのに対し、JD Worldwideの1位店舗は2位に約4.2倍の差をつけており、1位店舗の強さが伺える。また、Tmall国際は上位をメーカーECサイトが独占しているが、JD Worldwideは10位に唯一メーカーが入っているのみで他は全て小売だ。また美容関連と言っても、美容家電が3店舗もランクインしており、家電色の強いJD Worldwideの色がよく出ているランキングといえる。
マタニティ/ベビー
マタニティ/べビ―においては、JD Worldwideにおける1位店舗と2位以下の店舗の差がさらに顕著だ。その差はなんと6.5倍であり、圧倒的な売上の高さを誇っている。なお、10位までの店舗全体の売上に占める割合は約64%であり、シェアを独占していることがわかる。一方でTmall国際においては、JD Worldwideのように1位店舗が突出した売上高を誇っているわけでもなく、むしろ1~3位までに大きな差はない。両サイトの違いが極端に表れた例だといえよう。さらにこちらもTmall国際ではメーカーECサイトが5店舗ランクインしているが、JD Worldwideでは1店舗もランクインしていないという結果となった。
商品ランキング
次に越境ECモールの両サイトの商品別の売上高を見ていこう。
2016年の両サイトにおける売上上位10商品をピックアップした。Tmall国際のランキングは商品種類にばらつきがあるが、JD Worldwideのランキングは「PC」、「オイル」、「紙オムツ」など、同種類の商品が数多くランクインしている。1位と2位の売上高の差はそれほど大きくはなく、Tmall国際で1.25倍、JD Worldwideで1.49倍だ。商品単価はTmall国際では1・4位が8万円オーバー、2位が4万円オーバーだが、それ以外は1万円未満だ。JD Worldwideではさらにその差は顕著で1・3・10位が25万円オーバーだが、それ以外は3,000円未満となっている。
次は上位カテゴリの商品ランキングを見ていこう。
2016年の両サイトにおける売上上位カテゴリのうち、共通する2カテゴリである美容関連とマタニティ/ベビーの売上上位10商品を比較したランキングである。
美容関連
美容関連だが、両サイトのランキングで最も違う点は、Tmall国際のランキングに載っている商品が全て女性向けのものであるのに対して、JD Worldwideのランキングには男性向け商品である「シェーバー」が5つもランクインしていることだろう。両サイトに出店している店舗の違い、もしくは消費者の傾向の違いがこのランキングに反映されているといえる。売上に関しては、JD Worldwideの上位3商品は売上がほぼ同じであり、なおかつ単価の低い2、3位の商品が、単価の高い1位の商と拮抗している事実は興味深い。
マタニティ/ベビー
次にマタニティ/ベビーを見ていく。このカテゴリの商品は紙オムツが11個、粉ミルクが8個、ミキサーが1個と3種類の商品だけで独占されている。またJD Worldwideでは花王の紙オムツが圧倒的な人気を誇っている。売上は、Tmall国際の1~10位までの商品の差は非常に小さく1位の売上は10位の1.5倍に留まっている。商品単価は、ミキサー以外は非常に安くなっている。
まとめ
越境ECではない通常のモールであるTmallとJD.comは大きな差がついているが、越境ECモールではそれほど大きな差がついているわけではなく、その差は1.5倍程度に留まっていた。その差のほとんどはTmallの11月の独身の日の時期の売上だ。独身の日は越境ECモールでも効果が絶大で、Tmall国際でも非常に大きな売上を確保していた。
店舗で見ると、メーカー系が強みを見せるTmall国際と比べて、小売店舗の躍進が目立つJD Worldwideという色がついている。
商品でみると、Tmall国際は多種多様な商品が売上を伸ばしているが、JD Worldwideでは一部の商品に売上が偏る傾向が強く、特に家電系の商品は強くなっている。
2016年も越境ECの売上は各種の調査データによると大きな躍進を遂げている。ここで紹介した各モールの強みや特性を理解して、それぞれのモールへの出店戦略を検討していき、大きな成果を得ていって欲しい。
この分析に用いたデータについて
この記事は株式会社Nintが提供するECデータ推計サービス 「Nint(ニント)」に基づき作成されています。記事中の数値はすべて「Nint(ニント)」 が独自のビッグデータ技術を用いて算出した推計値となり、紙面の特性上詳細なデータは省略しております。より詳細なデータをご希望の方や執筆記事にご意見のある方は、こちらからお問い合わせ下さい。なお、上記に展開されているすべての知的財産権等は株式会社Nintが保有しております。またこの記事の執筆にあたり参考とした各サイトのクリエイティブなどは該当する各団体が権利を保有しております。
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