2020〜2024年のランドセル市場はこう変わった!-3大ECモールの売上と購買動向を大公開-
こんにちは、Nintデータアナリストの山本です。
溶けそうなほど日差しの強い日が続きますね!本年は10年に一度の酷暑と言われるほど気温が高い日が多いようです。そんな暑い日が続くこの時期に、盛り上がりを見せる市場の一つに、「ランドセル」があるのはご存じでしょうか?
一般社団法人ランドセル工業会の「ランドセル購入に関する調査(2024年)」によると2024年4月に小学校に進学する児童のランドセルを購入した時期は5月が最も高く、次いで8月で、この時期に盛り上がりをみせます。購入時期の回答は、毎年この時期になる傾向のため、5月~8月はランドセル市場が盛り上がる季節といえそうです。
同調査では、さらに購入までに訪問した店舗として、「WEB」が36%以上を占めているとの調査結果も掲載されています。オンラインでの情報収集や比較検討が、ランドセル購入において重要なプロセスとなっていることがわかります。
購入時に検討されるEC市場に関して今回は国内3大ECモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング)の動向から、そのトレンドを見ていきます。3大ECモールでは購入時期がオフラインと一緒なのか、なども併せて見ていただくことで、EC市場の動向に「なるほど・意外」などの感想と、「3大ECモールの動向を知ることができるツールの存在」を知っていただけたら幸いです。
目次
本記事のポイント3点
- ランドセル市場の2極化傾向
- オフラインと異なるEC市場の購買動向
- ランドセル本体とオプション品で異なる購買タイミング
3大ECモールにおけるランドセル市場の推移
さっそくランドセル市場の推移を見ていきましょう。
3大ECモールのランドセル市場は年々上昇しており、2023年では2022年比で115%で成長しています。販売数量は、2023年に2022年比で136%と大きく伸長しています。
ランドセル市場の購入平均単価は、約5.5万以上が全体の57%を占め、一つの指標価格となっています。3大ECモールの平均単価は市場全体と比較すると、約半額の2.5万円前後で推移しています。
2023年の3大ECモールのランドセル市場は、2022年に比べ平均単価が減少、販売数量が増加し、結果として市場は前年を超えています。
次に月別の売上推移を見ていきます。
図2では月別に2020年1月から、図3では1月~12月を一つの区切りとして、各年の売上推移をまとめました。
図2から売上が上昇する際に、平均単価も上昇する傾向がみられます。一方2023年5月・6月に関しては、売上が年間でピークを迎える一方、平均単価の上昇は8月がピークでした。このことが、2023年の平均単価を下げた要因のようです。この時期に考えられるのは、アフターコロナによる外出機会の増加です。
仮説ではありますが、外出機会の増加に伴い、購買をオフライン市場で行った結果、オンライン・オフラインでの使い分けが起きた結果、平均単価の上昇が抑えられたのかもしれません。
図3を見ると、3大ECモールでのランドセル市場は、5月と9月に売上が上昇傾向となることが分かります。一方、特徴的なのは2020年です。2020年は6月にのみ集中して売上が出ています。おそらく、ランドセル購入時期として最も需要の高い、5月にオフライン購入を考えていた方が、オフライン購入をあきらめてEC市場で購入した可能性を示唆しています。
EC市場では、5月は同じです。参考までに、2024年4月に入学する家庭がいつ頃ランドセルを購入したかを確認すると、5月が最も高く、次いで8月でした。(参考参照)
次いで高いのは9月です。これはモールセールなどによる影響で、EC市場でランドセルを購入する方は、ポイント還元率も意識して購入していることの表れと考えられます。
モールごとで異なる!売上ピーク時期
3大ECモールで推移をみていたランドセル市場ですが、その動きは各モール同じなのでしょうか?3モールを「モールA」「モールB」「モールC」として動向を確認します。
各モールで見ると、それぞれ特徴があることがわかります。
モールA・Bは市場の需要時期に売上が上昇し、Aモールでは2023年8月に、Bモールでは6月に売上が高くなる傾向がみられます。
一方モールCでは3月に売上が上昇しております。この傾向は2022年より続いており、2024年も同様の傾向が見られます。4月より進学になるので、駆け込み需要なのか、それとも次年度を見据えての超早期の需要なのか、モールCで展開する場合は需要の判断がポイントになりそうです。需要時期に関して数か月の違いなどはありますが、ここまで動きが異なるジャンルも珍しいです。
売れ筋商品とその特徴
モールごとに売れる時期が異なるため、2020〜2024年の各年を基準に、3大ECモールで最も売れたTOP100商品を各年ごとに集計、その特徴について5つにまとめました。
ランドセル市場にかかわるショップ様・メーカー様、そしてこれから購入を検討している親御様、必見です。
①カラーバリエーション
- 2020年〜2021年の傾向:ランドセルの売上上位の主流カラーは伝統的な「黒」や「赤」が中心でした。これらの色は男女の性別に依存した選択肢として定着しており、他のカラーの選択肢は限られていました。
- 2022年〜2024年の傾向:ミントグリーン、パープル、ピンクなどの鮮やかな色が増え、カラーバリエーションが大幅に拡大しました。特にパステルカラーやメタリックカラーが人気を集めており、個性的なカラーを求める消費者が増加しています。消費者はより自分らしさを表現できるカラーを選ぶ傾向が強まっています。
②デザインのカスタマイズ
- 2020年〜2021年の傾向:ランドセルのデザインは比較的シンプルで、消費者が選べるオプションは限られていました。ランドセルそのものが機能的であることが重視され、デザインの自由度は低かったです。
- 2022年〜2024年の傾向:引手や鋲、ステッチなどのデザイン要素をカスタマイズできる商品が増加しました。特に、消費者が自分だけのランドセルを作りたいというニーズに応える形で、デザインのカスタマイズが可能な商品が多く登場しています。これにより、個性を反映したオリジナルのランドセルを求める消費者が増えています。
③素材と機能性の進化
- 2020年〜2021年の傾向:以前はクラリーノや牛革といった素材が主流であり、機能面でもA4フラットファイル対応程度が標準的でした。耐久性や基本的な使い勝手が重視されていました。
- 2022年〜2024年の傾向:最新のランドセルには高級人工皮革やパール生地、さらには防水や自動ロック機能などが標準装備されています。また、タブレットPCの収納を考慮したデザインや、軽量化が図られた素材の使用が増えており、消費者は、より機能性に優れたランドセルを求める傾向が強まっています。
④ サステナビリティとランドセルのリメイク
- 2020年〜2021年の傾向:環境やサステナビリティに対する意識はランドセル選びにおいてそれほど重要視されていませんでした。使い捨て感覚で購入されることが一般的でした。
- 2022年〜2024年の傾向:サステナブル素材を使用したランドセルや、使用後にリメイクして別の商品に生まれ変わらせるサービスが上位に登場しています。消費者の間で、環境に配慮した選択肢や、ランドセルを長く愛用した後、キーケースやペンケース、ミニチュアランドセルなどとして、ランドセルをリメイクするニーズが上昇していると思われます。
⑤ 購入特典とサービスの充実
- 2020年〜2021年の傾向:ランドセル購入時の特典やサービスは、ネームタグの付属や少額の割引が主流で、購入後のアフターサービスは比較的シンプルなものでした。
- 2022年〜2024年の傾向:現在では、購入特典として防犯ブザーやランドセルカバーなどの実用的なアイテムが付属するほか、7年間の保証や返品保証といったサービスが標準化されています。また、購入時にクーポンを利用することでさらに特典が増えるといったプロモーションも行われています。これにより、消費者は付加価値を重視する傾向が強まっています。
また、上位TOP100商品の平均単価の構成比(図7)を、市場のアンケート調査結果(図8)と比較すると、高単価商品では、ほぼ同じ構成比数字に、低単価商品ではEC市場のほうが高く、中単価は調査結果より低い傾向が見られます。
このことから、EC市場では、高単価商品が売れていないわけではなく、高単価と低単価の2極化により、単価が下がっているのではないかと思われます。
※TOP100商品はランドセル市場の約25%~30%の構成比です。
実はニーズが違う!?ランドセルカバー
最後に、ランドセルのオプション品ともいえる、ランドセルカバーの市場について見ていきます。
ランドセル本体が前年の5月~8月に購入される傾向が多いのに対し、ランドセルカバーは4月に購入されることが多いことが分かります。この需要は、新入生が学校生活を始めてから、ランドセルを実際に使ってみて、「やっぱりカバーが必要だな」と感じることで発生しているのではないでしょうか。ひょっとすると防犯ブザーなど他のオプション品と同じ動きをしているかもしれません。
このように、ランドセル本体とオプション品であるランドセルカバーでは消費者の購買タイミングやニーズが異なっています。事前にしっかりと計画して購入するランドセルとは異なり、オプション品は使用状況に応じて、後から必要に応じて購入される可能性が示唆される内容です。
まとめ
消費者の趣向は「個性の表現」「機能性」「サステナビリティ」「付加価値」にますます重きを置く方向に進んでいることが伺えます。ランドセルは単なる通学道具から、個性やライフスタイルを反映した重要なアイテムへと進化していると言えるでしょう。
オプション品の売れ方の違いを理解することで、ランドセル市場の奥深さや消費者行動の多様性がより明確になります。これからランドセルやその関連商品を購入される方にとっても、実際の使用シーンをイメージして必要なオプション品をタイムリーに揃えることが重要と言えるでしょう。
モールごとの売れる時期の違い、TOP100商品で見たときの平均単価構成の違い、ランドセル本体とオプション品での購入時期の違いと、TOP100商品からみるEC市場でのランドセル需要の消費者意識の変化など、様々な比較・違いを確認してきましたがいかがだったでしょうか。新たな発見や気づきがあり、「EC市場も面白い」と感じていただけましたら幸いです。
参考出典元
- 一般社団法人ランドセル工業会「ランドセル購入に関する調査 2024年」
Nint ECommerceに関して
日本国内のEC市場の約7割を占める3大ECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)の売上・販売数量をモール別、ジャンル別、ショップ別、商品別に分析できる画期的なツールです。Nint ECommerceを活用いただくことで、以下のイベント対策を効率的にサポートしています。
活用例
商品在庫(SKU単位)の拡充
・競合価格を見ながら自社の販売価格を設定
・競合のポイント倍率を見ながら自社のポイント倍率を設定
・商品名(商品情報)での差別化
・検索露出(RPPなど)の強化
Nint ECommerceを活用することで、ECビジネスチャンス創出に役立ちます。ご興味のある方は、ぜひ下記リンクよりNint ECommerceの詳細をご確認ください。
■調査概要・免責事項
・本調査は、Nint ECommerceを用い、国内の3大ECモールである楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングを対象として調査しました。
今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。
Amazon:シューズ&バッグ>キッズ・ベビー>キッズバッグ・財布>ランドセル ジャンル以下
楽天 :キッズ・ベビー・マタニティ>キッズファッション>バッグ・ランドセル>ランドセル ジャンル以下
Yahoo!ショッピング:ベビー、キッズ、マタニティ>バッグ、ランドセル>ランドセル ジャンル以下
※詳細ジャンルに関しては株式会社Nintへお問い合わせください。
・レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません。
■調査期間
2020 年 1 ⽉〜2024 年 7 ⽉
※本稿における Nint 推計データは 2024 年 8 ⽉時点のものを使⽤
■調査機関(調査主体)
株式会社Nint
■調査対象
Nint推計データ
Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。
■転載・引用について
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【出典:「2020〜2024年のランドセル市場はこう変わった!-3大ECモールの売上と購買動向を大公開-」(2024年8月29日公開)】
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