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夏でも需要あり!カイロ市場規模と3大ECモールの売上推移を徹底分析

#市場規模 #ECデータ

こんにちは、Nintデータアナリストの山本です。

暑くて溶けそうな日々の中なのに、みなさん一度は「寒い!」ということを経験したことがあるのではないでしょうか。キンキンに冷えた部屋で長時間作業をする、冷房の強く効いたオフィスでの仕事、スーパーでのお買い物、喫茶店、その他多くの建物などで、薄着をしていて冷えてしまった、など……。矛盾してしまいますが、そんな時は「温かい」ものが欲しくなります。

今回、そんな周りは暑いのに寒いと感じる時に使う冷え対策商品である、「カイロ」について調査しました。ECの特徴である、棚がなく品揃えが多いという利点は、真夏のカイロ市場にどのように影響するのでしょうか?

今回は国内3大ECモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング)の動向から、そのトレンドを見ていきます。「やはり」なのか「意外」なのか、ぜひ本記事を読んで感じてもらい、ついでに国内のEC市場を調査するツール(Nint ECommerce)の存在を知ってもらえたら幸いです。

本記事のポイント3点

  • 夏場でも市場は数千万円規模!?3大ECモールのカイロ市場
  • 春先に一度需要が増加!行楽需要などが影響!?
  • 用途・ニーズの多様化により進化をするカイロの特徴を売れ筋TOP100商品の変遷からチェック

3大ECモールにおけるカイロ市場の推移

さっそくカイロ市場の推移を見ていきましょう。カイロには大きく「使い捨てカイロ」「電気・充電式カイロ」の2種類があります。
今回は、この2種類について動向を確認していきます。まずは年度単位の市場推移です。

図1:3大ECモール 使い捨てカイロ市場動向(売上・数量・平均単価)

2023年の使い捨てカイロ市場は、前年比136%と非常に好調に推移し、過去最大の売上となりました。後ほど詳しく触れますが、月別での前年差ではほぼ全ての月で上回っており、特に11月・12月・2月の好調差が売上の上昇に影響しました。平均単価は2019年が1,135円に対し、1,672円まで上昇、値上げ率は32%です。上昇額だけを見ると、この5年で3割上昇しております。

図2:3大ECモール 電気・充電式カイロ市場動向

電気・充電式カイロは電気アンカなども含まれる市場です。2023年の電気・充電式カイロ市場は、前年比117%で推移し、調査をしている2019年からの期間中、最も高い売上となっています。月別で見ると、1月・11月・12月で昨年度を大きく上回る売上でした。平均単価は2019年が2,390円に対し、3,359円まで上昇、値上げ率は28%でした。使い捨てカイロも、電気・充電式カイロも2023年は成長した年であったと言えます。

月単位の推移で見えるカイロ市場の特徴

次に、月単位の推移で動向を確認しました。

図3:3大ECモール使い捨てカイロ市場動向(月次売上動向)
図4:3大ECモール 使い捨てカイロ市場動向(1月~12月年度単位)

使い捨てカイロ市場を月別推移でみていくと、いくつかの事実が見えてきます。

一つ目は、「夏場」でも売上が「0」ではない点です。暑い夏場は需要が相当減少するのではないかと予想する中、その市場規模は数千万円単位で存在します。

二つ目は、「春先」で売上が一度上昇するタイミングがあることです。2020年4月、2022年5月、2023年5月の使い捨てカイロ市場では、前月よりも売上が高くなっています。次第に暑くなるこの時期に売上が上昇する要因にはいくつか考えられ、行楽時期の5月はレジャーとして登山や釣りなどを楽しむ方が多くいます。標高の低い場所では気温が高まる4月・5月でも、標高が高い場所や、あまり動かずに外にいるには寒い日もあります。それらの対策として購入意欲が高まる傾向があるのかもしれません。

別の理由としては、上記とは真逆に暑い日に職場などでエアコンが使用され、冷えが起きたことも考えられます。そのほか激甚災害指定までされる集中豪雨が増える時期でもあるので、防災意識の高まりで朝夕がまだ冷える日もあるため、備えとしての購入が起きているのかもしれません。店頭から消えてしまい、まだカイロが欲しい方がEC市場へ来られている可能性もあります。

図5:3大ECモール電気・充電式カイロ市場動向(月次売上動向)
図6:3大ECモール電気・充電式カイロ市場動向(1月~12月年度単位)

電気・充電式カイロの月次動向は非常に分かりやすく、売上規模は変化していますが、売上曲線には変化が見られません。売上のピークは各年12月です。12月のみ売上が高い理由として、電気・充電式カイロが年末セールなどで取り扱われることが多い季節商品の位置づけであることが大きく影響していると考えられます。

使い捨てカイロは3月〜5月にも売上の小さいヤマができやすく、電気・充電式カイロではそれは見られない。どちらも12月がその年最大の売上月となりやすい傾向が確認できました。

年間売上最小月・最大月での商品の違いと商品変遷

次に、年間で最も売上の低い月・高い月でのTOP10商品に違いがあるのか、また、各年度のTOP100商品にはどのような特徴があり、変遷してきているのか確認しました。

図7:使い捨てカイロ、電気・充電式カイロ 売上最小・最大月

【年間売上最小月・最大月TOP10比較】

◆使い捨てカイロ(違いあり)

売上最小月:利便性や快適性にフォーカスし、リラックスや軽量などの商品名を入れた商品が目立つ。
売上最大月:耐久性、機能性、特定用途に対する高い適応性を持ち、アウトドアや長時間使用に特化した商品が目立つ。

◆電気・充電式カイロ(違いあり)

売上最小月:単にバッテリーの持ち時間だけでなく、温度調節やモバイルバッテリー機能、デジタル表示といった使いやすさや利便性を向上させる追加機能が強調されている。
売上最大月:主にバッテリーの容量や使用時間の長さに焦点を当てており、「どれだけ長く使えるか」という実用面を重視。

【年間売上TOP100商品からみる変遷】

 ◆使い捨てカイロ

  1. 多様化する用途と機能性
    使い捨てカイロは、単なる貼るタイプから「足先用」「靴用」「肩用」「腰用」など、部位や用途に特化した製品が急増。冬の寒さ対策がより個別ニーズに対応した形でプロモーションされています。
  2. 高温・長時間持続の進化
    従来の標準温度帯を超える商品が近年人気を高めています。寒冷地や厳しい寒さ対策への需要商品として、消費者ニーズに応えています。持続時間が14時間を超える製品も登場し、アウトドアや長時間の外出にも適した商品ラインナップが充実しています。
  3. 蒸気を使ったリラックスタイプの人気
    リラックス効果を持つホットアイマスクや電子レンジで温めるアイマスクなどなど、温熱効果を楽しみながらリラックスできる商品が多数見られます。これらの商品は、デスクワークや家庭でのリフレッシュアイテムとしての利用も想定されます。
  4. デザイン性と付加価値の向上
    近年ではカイロ自体のデザインがカラフルなものや、絵柄があるもの、カイロ用の袋など、シンプルな見た目からファッショナブルなカイロへと変化しています。また、下着に貼ることで、下半身の冷えを予防するなど健康を意識した商品も増加し、ただの防寒具ではなく、生活の質を向上させる付加価値を持つ製品へと進化しています。
  5. エコ・繰り返し使えるカイロの台頭
    繰り返し使える特定メーカーのカイロが、近年のエコ・環境に配慮した製品として評価され、使い捨てカイロ以外の選択肢として広がっています。
  6. 用途別・場所別のカイロの浸透
    靴下用やインソール型など、使い方に応じたカイロが普及。特に「足元専用」「靴の中に入れるタイプ」など、多様な形状の商品が人気です。

◆電気・充電式カイロ

  1. 進化したデザインと機能
    年々、製品の小型化・軽量化が進み、持ち運びやすくなっています。デザイン性も向上し、可愛いキャラクターやギフト向けの商品も増加しました。
  2. 多機能化の傾向
    モバイルバッテリー機能付きのカイロや、急速発熱、長時間連続使用(14時間以上)が可能な商品が増えています。一部の製品にはLEDライトや懐中電灯機能も搭載され、アウトドアや緊急時の使用にも対応しています。
  3. 温度調節と表示機能の強化
    2段階から4段階温度調節が可能な商品や、温度をデジタル表示する機能付きの商品が増えました。
  4. 分離式・マグネット式の普及
    分離式やマグネット式のカイロが登場。1台で複数人が同時に使用できるなど柔軟な使い方が可能になっています。
  5. 需要の変化
    プレゼント需要が増加し、季節限定モデルやクリスマス限定のデザインが人気。利便性とデザインを兼ね備えた製品が、日常使いからアウトドアまで幅広いシーンでの使用が想定されています。

カイロ市場まとめ

本記事では、国内3大ECモールにおけるカイロ市場の動向を分析しました。意外にも、真夏でも数千万円規模の市場が存在し、需要が継続していることが明らかになりました。使い捨てカイロと電気・充電式カイロの両市場は2023年に大きく成長し、特に使い捨てカイロには、春先に小さなヤマができることも特徴です。

商品特徴として使い捨てタイプは「貼る」タイプが主流で、近年では足元に特化したカイロ、通常よりも温度が高いカイロ、長時間使用可能なカイロなど、様々な変化が見られます。電気カイロもモバイルバッテリーとしての充電機能や、保温調整機能など機能性の強化に加え、デザイン性を高めることで、何かがあった際の備えの一つとして1台複数役の機能を果たすものへ変わってきています。

今後もカイロ市場は、消費者のニーズや環境の変化に応じて進化し続けることが予想されます。EC市場での購買動向を理解し、適切な対策を講じることで、競争優位を確保することが重要です。

本記事を通じて、国内のEC市場を調査するツール「Nint ECommerce」の有用性を感じていただければ幸いです。


Nint ECommerceに関して

日本国内のEC市場の約7割を占める3大ECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)の売上・販売数量をモール別、ジャンル別、ショップ別、商品別に分析できる画期的なツールです。Nint ECommerceを活用いただくことで、以下のイベント対策を効率的にサポートしています。

活用例

商品在庫(SKU単位)の拡充
 競合価格を見ながら自社の販売価格を設定
 競合のポイント倍率を見ながら自社のポイント倍率を設定
 商品名(商品情報)での差別化
 検索露出(RPPなど)の強化

Nint ECommerceを活用することで、ECビジネスチャンス創出に役立ちます。ご興味のある方は、ぜひ下記リンクよりNint ECommerceの詳細をご確認ください。

■調査概要・免責事項
・本調査は、Nint ECommerceを用い、国内の3大ECモールである楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングを対象として調査しました。
今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。
・Amazon
ホーム&キッチン>家電>空調・季節家電(201709)
ドラッグストア>衛生用品・ヘルスケア>温熱用品>使い捨てカイロ
・楽天市場
ダイエット・健康>健康グッズ>カイロ
家電>季節・空調家電>電気あんか・カイロ
・Yahoo!ショッピング
ダイエット、健康>冷え対策、保温グッズ>充電式カイロ
ダイエット、健康>冷え対策、保温グッズ>使い捨てカイロ
※詳細ジャンルに関しては株式会社Nintへお問い合わせください。

・レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません。

■調査期間
2020 年 1 ⽉〜2024 年 7 ⽉
※本稿における Nint 推計データは 2024 年 8 ⽉時点のものを使⽤

■調査機関(調査主体)
株式会社Nint

■調査対象
Nint推計データ
Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。

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【出典:「夏でも需要あり!カイロ市場規模と3大ECモールの売上推移を徹底分析」(2024年8月30日公開)】
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