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禁輸による影響は?3大ECモールにおけるホタテの価格・売上をチェック!

こんにちは、Nintデータアナリストの山本です。

暖冬と言われておりますが、やはり11月も半ばをすぎ、後半を迎えると朝はグッと冷えてきますね。昼と夜で温度差が10℃以上ある日も多いので、この時期の服装は毎年の悩みの種だったりします。あとひと月程度で年末を迎えることもあり、テレビのニュースや番組で、今年1年を振り返った内容のものを見かけるようになってきました。そのような報道の中で、特に気になったのが「ホタテ」の話題です。昨今の報道では、処理水問題により、ホタテが出荷できず、大量に売れ残っている。という記事・報道がありましたが、現在はどうなっているのか。
私たちの身近な方法での支援としては、「通販」が中心になるかと思いますが、EC市場では9月・10月とどのように推移したのか。一度気になると止まらないのがアナリストであり、筆者であります。

そこで今回は、EC市場において市場動向を見る上で外せない国内の3大ECモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング)で、「ホタテ」がどのように推移したのか、売上動向と、販売方法について見ていきたいと思います。
この記事では好調に推移しているショップの販売方法について言及しております。本記事が販売店の方々にとって有益な情報となれば幸いです。

本記事のポイント3点
1. 3大ECモールのホタテは処理水報道後の9月・10月も好調に推移
2. 2023年の9月・10月で好調要因が異なる。キーワードは「ふるさと納税」!
3. 世情を反映した展開が売上増加のカギ!?「商品名の工夫」と「早期展開」がポイント

禁輸で輸出先を失ったホタテ

これほどにホタテが注目された背景にはどのようなものがあったのでしょうか。
これには日本から輸出される海産物の約28%を占めるのが「ホタテ」であり、昨今の処理水放出後、主要輸出国である中国が海産物の全面禁輸としたことで、輸出先を失ったことが要因となっています。ホタテの生産は北海道の割合が9割近くと非常に高く、ホタテのみで生計を立てる水産業者の方にとっても大打撃となっておりました。
その後、各社報道により、ホタテ支援の動きが活発化し、現在に至ります。実際にGoogleTrendsで直近1年間の「ホタテ」のワードの人気度推移を調べたところ8月の処理水放出後以降から上昇が続いていることが分かります。

図1:GoogleTrends 「ホタテ」検索人気度推移

ホタテの販売に関しては、おそらく通販やECモールが中心となるかと思われます。
実際に、特設サイトでの販売や、ECサイトを活用した販売、ふるさと納税での販売などが報道されておりました。この後はそんなEC市場の約7割を占める3大ECモールでホタテ市場がどのように推移したか、確認していきたいと思います。

応援購入の影響?好調に推移する3大ECモールのホタテの売上げ

早速3大ECモールにおけるホタテの売上推移を市場全体、モール単位で見ていきたいと思います。

図2:3大ECモールにおけるホタテの売上推移
図3:2023年各モールにおけるホタテの売上推移(2023年1月~10月)

上記の図より、下記のことが分かりました。

1:売上のピークは12月
ホタテの売上は「カニ」など他の海産物同様、11月から立ち上がり、12月にピークを迎えるのが通年のようです。

2:EC市場におけるホタテの売上は年々「増加傾向」
2019年~2022年の売上推移を見ると年々上昇していることが分かります。国内の年間の水揚げ量は横ばい傾向となっているため、販売先が「EC市場へと推移」している可能性が示唆されています。

3:2023年の9月・10月に特殊な動きがみられる
他の年度と違い、2023年の9月・10月はその動きに特徴がみられます。主な出来事の記載事項にあるように、9月に報道が多くされた点、また10月1日よりふるさと納税の一部ルール改正等が控えていたことにより、需要が喚起されたのかもしれません。
3大ECモール市場におけるホタテの売上は今、報道やふるさと納税の改変の影響で、上昇が続いております。

4:モール毎に反応が違う
モール毎に動きが異なっているのにも注目です。本年9月はモールBが大幅に伸長した一方で、モールBは右肩上がりの傾向となっております。モールAにおいては横ばい傾向となっており、モール毎にその特徴が出た結果となっています。

このように、2023年の9月・10月は例年と比べ動きが異なる点があること、そして3大ECモール市場においては、ホタテの売上は好調に推移していることが分かりました。

平均価格推移から見る、ホタテ市場の「イマ」

市場は上昇傾向となっていることが分かりましたが、平均単価はどのように推移しているのでしょうか。ひょっとすると、2023年8月の中国の輸入禁止報道を受け、大量の余ったホタテの処分販売が発生している可能性もあります。価格の乱高下は果たして起きたのか、確認していきたいと思います。

図4:3大ECモールにおけるホタテの平均単価推移(2019年~現在)
図5:3大ECモールにおけるホタテの平均単価・販売数量推移

図より価格の動向は以下の特徴が見えてきました。

1:価格のピークは毎年同じ月(12月)である
平均単価は毎年同様の動きを見せており、需要時期に合わせて上昇傾向であることが分かります。また、各年同様の動きとなっており、12月がピークとなっております。
→先ほどの市場売上規模のピークと併せて分析することで、12月には平均単価の上昇が見られ、結果として売上が上昇する一因となっていると判断できます。

2:2023年9月に関して平均単価が例年を上回る
中国による日本の海産物全面輸入禁止により、販売先を無くした為、ホタテ産業関係社としては、少しでも安くても販売を・・・と考えがちですが、平均単価の推移を確認すると価格に関してはむしろ上昇傾向が見られます。

平均単価上昇の要素として、販売数量の増減が考えられます。今回の単価上昇は、単なる価格帯における売上構成比の変化ではなく、平均単価よりも「高単価な商品」の販売量の増加が考えられます。これらの事から、9月においては、例年の平均単価を下回るような販売は見られなかったと言えます。※10月は例年並みの平均単価です。

一方で注意しておきたいのは、売上がピークになる12月との平均単価の差です。
図2で示したように、ホタテの「売上」は本来11月から立ち上がり、12月にピークを迎えます。
また、図4から分かるように、ホタテの「平均単価」のピークも同様に11月・12月であり、今回の9月の平均単価を上回ります。確かに2023年の9月の平均単価は例年に比べ、約1.4倍となっていますが、この高単価の要因は、「安売り」「値下げ処分」によるものではないと断定しきるにはまだ判断要素が必要となりそうです。

ニュース報道の影響?支援購入?ホタテ市場「9月」「10月」の主力プレイヤーを確認する

3大ECモールにおいて、ホタテの売上は好調に推移しており、平均単価も9月には上昇傾向が見られた事が分かりました。次は好調ショップの動向を見る前に、この売上が好調に推移している、2023年の「9月」「10月」の需要に関してもう少し深掘りしようと思います。
ここでポイントになるのは、ECモール内に、ふるさと納税関連のショップが存在することです。今年は、10月1日よりふるさと納税の改変(詳細は弊社ふるさと納税ブログをご確認)による駆け込み需要が見込まれました。そのため、今回は以下定義にて分類を行いました。

【定義】
3大ECモールのショップを、下記の2つに分類しました。

1:ふるさと納税関連ショップ
→~ふる。ふる~というショップ名で、ふるさと納税関連のショップと判断できるものを分類
2:ふるさと納税非関連ショップ
→上記1の定義以外の全てのショップ

分類結果は以下の通りでした。

図6:ふるさと納税関連ショップ売上推移
図7:ふるさと納税非関連ショップ売上推移

このことから、2023年「9月」の需要と「10月」の需要は以下の事象が起因となっている可能性が示唆されます。

9月の需要
ふるさと納税関係のショップ売上が急激に増加、「報道の影響」と「ふるさと納税の改変前による駆け込み需要」が大きく影響

10月の需要
ふるさと納税とは非関連ショップで売上が増加傾向。これらのショップは年末に向けて売上が増加する傾向のショップであることから、「報道影響」による「露出面強化」と「需要の前倒し」が発生している可能性が考えられます。

このように、売上が上昇している9月・10月ですが、その要因は各々で異なるようです。
今回は、ふるさと納税非関連ショップで10月に好調であった、ショップA・Bを比較しその詳細を掘り下げていきたいと思います。

好調ショップA・Bの比較と販促方法

それでは早速、好調ショップA・Bがどのようにして10月に売上を創出したのかを確認していきましょう。まずは両ショップの前年比・販促状況をNint ECommerceの「※ショップ分析」機能を活用し、比較します。

Nint ECommerceのショップ分析機能とは
Nint ECommerceでは、気になるショップの売上・販促・売れ筋商品・商品名称の改名履歴・価格変更履歴などを確認することが可能です。
※一部ショップを除く

今回使用したショップ分析機能は以下になります。
1.広告解析:サーチ広告やWEB広告を確認する機能
2.ショップ比較機能:2ショップ以上を登録した際に使用可能になる、ショップ同士を比較する機能
3.改名履歴確認:ショップの商品一覧から、該当商品の改名履歴を確認する機能
図8:好調ショップA・Bの前年比・販促・改名履歴比較(Nint ECommerceショップ分析より)

前年比はショップAで2149%、ショップBで663%と前年を大きく伸ばす結果になっています。両者の特徴としては、昨年度は0であるサーチ広告・改名などを実施している点。異なっている点としては、WEB広告の有無となります。
少なくとも、好調ショップの2社は今回の報道に併せて展開が早かったことで、昨年度11月より浮上する売上が、10月に一気に伸びております。この点に加え、ひょっとするとWEB広告がショップAの伸長率により拍車をかける結果となっているのかもしれません。

興味深いのは、改名内容と、価格推移です。
ショップA・Bともに、改名内容は商品名に、現在のホタテ市場に関しての「応援」を謳う内容を加えるものでした。また、商品検索のサーチ広告にはそのような名称を設定していないのも特徴です。

Nint ECommerceを用いて調査した改名履歴

次に、ショップ別の売れ筋価格帯を時系列に確認しました。

図9:好調ショップA価格売上構成比推移(Nint ECommerce活用)
図10:好調ショップB価格売上構成比推移(Nint ECommerce活用)

価格帯はどちらも3,000円~3,999円が中心です。この価格帯の商品は貝柱などの商品で、総重量は1kgでした。また、2022年度(1月~12月)の同価格帯での商品も同様に1kgの商品です。このことは、昨年度同様の規格・価格で本年も販売しており、ホタテ禁輸後に大きく規格変更や値下げを行っているわけではない可能性を示唆しております。

また、ショップAは本来は6,000円~6,999円が主力の価格帯であり、今回の価格帯は本来の主力価格帯とは異なった価格帯であったことが分かります。同様にショップBも最需要期である12月の中心価格は4,000円~4,999円であり、今回の価格帯は非繁忙時期に売れる価格帯の商品であることが分かります。
両ショップ共通の特徴としては、今回の早期展開により、10月の売上が過去最高となっている点です。

好調ショップA・Bの価格・商品を確認することで、売上好調のポイントは以下3つであると推察されます。

1:早期展開による、チャンス創出
→世情をいち早く汲み取り、商品展開を通常よりひと月以上早めることで売上創出の機会を最大限にしている。

2:世論を見方につける「応援」系のワードを商品名に加える
世論・顧客心理を理解し、商品名に「応援」「支援」系の言葉を付け足すことで、消費者の購買意欲を喚起し、最大限の効果を生み出している可能性。

3:新たな価格帯での展開
→価格帯として、本来のショップで販売している価格帯ではなく、3,000円~3,999円といつもより更に求めやすい価格帯にすることで、上記1、2との相乗効果で、高い購買意欲へと繋げている可能性。

3大ECモールにおけるホタテの市場動向まとめ

8月下旬より話題に上がった「ホタテ」ですが、EC市場においては、9月・10月と好調に推移しました。その背景には、1:ふるさと納税の改変 2:消費者心理 3:ふるさと納税系以外の販売店の早期展開が影響しているようです。
9月には、本来12月がピークになるふるさと納税の需要が10月の改変の影響で発生している可能性が高いです。
一方10月には、好調ショップを分析すると、本来11月より売上が上がるふるさと納税非関連ショップが世情を鑑みて早期展開をすることによる結果である可能性が高いです。

EC市場におけるホタテの売上が今後も同様に右肩上がりに上昇していくのか、それともふるさと納税関連のショップ需要が前倒しされた結果、苦戦していくのか、もしくは前倒しで展開しているふるさと納税非関連ショップが勢いをそのままに伸長し続けていくのか。新しい価格帯の3,000円~3,999円の商品群が新たな波として今年のホタテ売上にどのように寄与していくのか、今後の動向が気になります。

備考

・今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。

・Rakuten
食品>魚介類・水産加工品>貝類>ホタテ

・Yahoo!ショッピング
食品>魚介類、海産物>貝類>ホタテ
食品>魚介類、海産物>貝類>ホタテ干物、貝柱

・Amazon
食品・飲料・お酒>生鮮魚介類・水産加工品>貝類

調査対象:Nint推計データ

Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。

データ抽出期間
2019 年1⽉〜2023年10⽉(※本稿における Nint 推計データは 2023年10⽉時点のものを使⽤)

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【出典:Nint BLOG「禁輸による影響は?3大ECモールにおけるホタテの価格・売上をチェック!」(2023年11月23日公開)】

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■本記事について
作成:山本 真大(Masahiro Yamamoto) /デジタルマーケティングUnitアナリスト
編集:村上 咲(Saki Murakami)/ デジタルマーケティングUnitエディター
  :瀧坂 義尚(Yoshinao Takisaka)/デジタルマーケティングUnitユニットリーダー 兼ブログ監修

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