東日本大震災から間もなく13年。 非常用持ち出し袋、簡易トイレ、非常食など3大ECモールの防災グッズ動向を調査!
こんにちは、Nintデータアナリストの山本です。
早いもので、2024年も3月になりました! 3月は卒業式や、ホワイトデー、春休みや春彼岸を思い浮かべる一方、東日本大震災を思い浮かべる方も多くいるのではないでしょうか。最近では、2024年1月に起きた令和6年能登半島地震なども記憶に新しいかと思います。
そこで今回は、備えあれば患いなしの「防災関連市場」について、国内3大ECモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング)の動向を調査します。今回は、防災グッズ関連市場として、「非常用持ち出し袋」「簡易トイレ」「非常食」を防災グッズ関連市場とし、市場動向を調査しました。
売れ筋商品を確認すると、近年の消費動向が変化してきているようです。
既に備えている方は「備災者」の動向を知る一つとして、これから備えようとしている方は何から始めたらよいかを知る一つとして、参考にしてもらえたらと思います。早速確認していきましょう!
防災グッズ関連ジャンル市場推移
日本は災害大国と言われることがあります。一般財団法人国土技術研究センターによると、日本の国土面積は、2022年時で世界の0.29%しかないにもかかわらず、全世界で起こったマグニチュード6以上の地震は日本だけで18.5%を占め、全世界の活火山の7.1%が日本にあります。台風に関しては、内閣府の防災情報のページによると、年間平均で10.8個の台風が接近、内2.6個が上陸しています。
地震頻度や火山活動・台風上陸数から考えると、改めて日本が災害大国と言われる理由が分かります。
災害と防災関連商品の関係性を確認するため、市場を「月次」でまとめ、その推移を確認しました。
図は、2019年1月から、2023年12月までの防災関連ジャンルの売上と平均単価の推移をまとめています。緑色の枠で囲まれた箇所は各年の「3月」「9月」です。赤色の枠で囲まれた箇所は、3月・9月以外で売上が高い月です。
3月は、3.11の東日本大震災が起きた月です。9月は9.1の関東大震災が起きたことから、防災の日が制定されています。
売上推移を見てみると、「3月」「9月」を中心に売上が上昇していることが分かります。
ジャンル別の売上推移をみると、「非常用持ち出し袋」のヤマが減少してきており、堅調に推移していた非常食に抜かれることが増え始めております。
赤色の枠で囲まれた月は2020年5月と、2023年5月です。2020年の5月~7月は豪雨による災害が発生しており、多くのメディアが報道していました。実際に2020年5月の豪雨は、経済産業省が5月15日から7月31日の間の豪雨による災害を激甚災害として指定したほどです。2023年も2020年同様「5月」に豪雨による被害が発生しており、多くの場面で報道されていました。また、2021年「3月」に高い売上が確認できますが、この年は東日本大震災から10年目という節目の年で、多くのメディアが取り上げ、報道していました。
これらのことからも、防災グッズ関連の市場は災害報道のタイミングで上昇することが伺えます。
防災市場は事前に備えることで上昇するのではなく、実際の災害や報道を目にすることで、消費者の危機感が起きることで需要が起きていると判断できそうです。
平均単価は「非常用持ち出し袋」が最も高く、1万円以上のモノが多くあります。2022年9月以降、市場平均単価は減少傾向ですが、これは「非常用持ち出し袋」の売上構成比が減少している影響と推察します。
先ほどの月次推移を年間推移でまとめました。
年度は1月~12月を該当年度としており、2019年は2019年1月~12月の売上実績です。
防災関連市場は、2020年に上昇し、2022年までほぼ横ばいで推移、2023年には減少していることが分かります(全体売上で前年比82.2%)
2023年防災関連市場の苦戦は、「非常用持ち出し袋」ジャンルの苦戦が要因のようです。一方で、「簡易トイレ」ジャンルは前年を超えていることが分かります。
非常用持ち出し袋の中身には簡易トイレや非常食が含まれます。そのため、初めて防災グッズを購入する場合、最も手に取りやすい商品の一つです。2023年の結果から、備災者の消費動向が変化している可能性が示唆されます。
3大ECモール各ジャンル毎の売上推移
各ジャンルの3モール毎の売上を確認すると、簡易トイレではCモールが、非常食ではBモールが、非常用持ち出し袋ではBモールとCモールの構成比が高いことが分かります。
ここから、「Nint ECommerce」を用いて、非常食ジャンルはBモールの動向を、トイレ・非常用持ち出し袋はそれぞれ構成比の高いCモール・Bモールの2019年・2022年・2023年における年間売上の上位80%を占める商品を抽出し、商品に使用される「キーワード」の使用頻度から、消費者の購買動向の変化を掴んでいきます。
非常食
売上推移を確認すると、非常食セットが最も高く、次いでご飯、缶詰パンとなっています。
推移を見てみると、2019年は、非常食セット・ご飯の売上は拮抗しておりましたが、2020年3月あたりから差が出始めていることが分かります。
図4で売上の最も高い非常食セットジャンルにおいて、何が起きたかをメーカー売上推移で確認しました。上位2社(A社・B社)が市場を牽引していることが分かります。
上位2社(A社・B社)の内A社の価格別売上推移を確認すると、1円~3999円の価格帯と、12000円~15999円の価格帯で売上が高いことが分かります。ここでA社の価格帯が市場と合っているのか、市場の売上構成比と価格帯を確認してみます。
A社の売上ボリュームは4000円~7999円が最も高いことが分かります。
今回はこの価格帯の2023年売上TOP300商品を確認、商品に使用されている使用頻度の高いキーワードを調べました。
<多いキーワード>
備蓄・防災食・5年保存・アルファ米・ごはん・3日分・7日分
非常食セットですが、ご飯が中心となっており、アルファ米など品種に関しての記載も多いのが特徴です。また、「5年」「3日」「7日」など、具体的な数値の記載が目立ちます。これらのことから、備災者の意識としては、「どのような品質で」「どのくらい持つか」が知りたいニーズのようです。
簡易トイレ・非常用持ち出し袋
2019年・2022年・2023年の売上上位80%商品で使用されるキーワードから、備災者の需要の変化を掴みます。
【簡易トイレ】
・使用頻度増加キーワード
100回・50回・非常用・防災・日本製・15年保存・渋滞・登山・キャンプ
近年の傾向は、回数などの数値が分かること、使用回数は100回・50回が人気のようです。非常用・防災はありますが、「防災用」は見当たらないのも特徴です。また、日本製というキーワードも増えていることから、品質に対しても高い水準が求められていると思われます。登山・キャンプなどの防災のみではなく、外出時としての使用シーンを連想させるキーワードの増加も窺えます。
2023年のみの特徴として、「渋滞」が商品名に使用されるようになってきており、アフターコロナによる外出頻度の上昇と、新たな需要が創出された可能性が考えられます。
【非常用持ち出し袋】
・使用頻度増加キーワード
防災リュック・2人用・1人用・地震・災害
・使用頻度減少キーワード
家族・避難セット
近年の傾向は、トイレと同様で、*人用と数値が分かることです。また、人数と一緒に「保存食」「非常食」「トイレ関連」のキーワードが記載されることが多いです。このことから備災者にとって、「食」と「衛生環境」が重要視されていることも窺えます。より具体的なイメージを持ってもらうこと。数値で表記すること。これらのことがトイレ同様非常用持ち出し袋にも求められているようです。
防災グッズ関連市場まとめ
防災関連の市場は目に付く機会と、災害時に売上が増加する傾向がみられます。
2023年にかけて起きた変化を考察すると、用途や目的がより具体的に記載されることを好む傾向が見られます。例えば、「家族」ではなく「1人用」など、人数が分かる点、50回分、7日分、5年保存など期間や量が数字で表現される点です。
ジャンルの推移から判断すると、2022年までに起きた需要は、「最低限備える需要」であり、2023年は「買い足す需要」のように思えます。簡易トイレや非常食などは、持ち出し袋にも多少入っているものもありますが、不足する事態に備えての準備という需要が2023年には窺えます。このように2023年では「新規需要」である「非常用持ち出し袋」が落ち着き、既に準備ができている備災者による「追加購入」へのシフトが見られます。
また、簡易トイレは新たな需要が起きている可能性も窺えます。近年のアウトドアブームによるキャンプ・登山への備えとして、アフターコロナを迎え、外出機会の増加による交通渋滞などの備えとしての需要が今後どのように推移していくかも注目です。
備考
・今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。
・Rakuten
日用品雑貨・文房具・手芸>防災関連グッズ ジャンル以下一部
・Yahoo!ショッピング
アウトドア、釣り、旅行用品>アウトドア、キャンプ、登山>エマージェンシーグッズ ジャンル以下一部
:キッチン、日用品、文具>防災、防犯、セーフティ>避難生活用品 ジャンル以下一部
・Amazon
ホーム&キッチン>防犯・防災用品>非常時・緊急避難用品
ジャンル以下一部:食品・飲料・お酒>パン・ジャム・シリアル>備蓄用保存パン
調査対象:Nint推計データ
Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。
データ抽出期間:
2019 年1⽉〜2023年12⽉(※本稿における Nint 推計データは 2024年2⽉時点のものを使⽤)
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【出典:Nint Blog「東日本大震災から間もなく13年。 非常用持ち出し袋、簡易トイレ、非常食など3大ECモールの防災グッズ動向を調査! 」(2024年3月5日公開)】
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■本記事について
作成:山本 真大(Masahiro Yamamoto)
編集:瀧坂 義尚(Yoshinao Takisaka)、村上 咲(Saki Murakami)
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