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バレンタイン市場規模は縮小!?2024年の最新動向と2025年の展望

#ECトレンド #イベント商戦 #市場規模 #食品業界

クリスマス、バレンタイン、母の日、お中元、お歳暮などさまざまなギフト商戦がある中で、年始最初のギフト商戦として多くの方が思い浮かべるのがバレンタインではないでしょうか。特にバレンタイン商戦は、チョコレート市場において年間売上に占める構成比が高い、非常に重要なイベントです。
本記事では、このバレンタイン商戦を通じて、チョコレート市場の2024年の傾向を分析します。さらに今回は、「バレンタイン」関連の商品ワードが含まれる商品群を「バレンタイン市場(全体)」として捉え、その推移も確認します。

チョコレート市場から見たバレンタインの動向と、「バレンタイン」関連の商品ジャンルを分析することで、EC市場におけるバレンタイン商戦の2025年展望を探ります。

■本記事のポイント(1分解説)

  • バレンタイン市場(1月・2月)はチョコレート市場で「前年割れ」、市場全体でも同様に「前年割れ」で推移。
  • 主要因は贈答用や自己消費用の商品需要が、オフライン市場へ流出していると考察。この傾向は主要メーカーだけでなく、市場全体で見られる現象。
  • バレンタイン市場全体でも、「チョコレート」ジャンルの存在感は目立つ。一方で、「化粧品」などチョコレート以外のジャンルも構成比が拡大している。
  • ポストコロナである2024年のバレンタイン市場から一巡したことと、出社頻度上昇による「忙しさ」はEC市場にとって追い風になる可能性

 
1:チョコレート、バレンタインそれぞれの市場動向


チョコレート市場の推移

直近3年間の3大ECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)のチョコレート市場の推移を確認すると、需要期は1月~3月に集中しており、一見すると2024年も変化がないようにみえます。(図1)

図1:3大ECモール チョコレート市場売上推移(月次)

一方、年間売上を100%とした場合の月別売上比率を確認すると(図2)、バレンタイン・ホワイトデー時期である1月~3月の売上構成比は年々減少しており、2024年には50%を下回りました。このデータは、バレンタイン需要とその他の需要の比率が変化していることを示しており、EC市場におけるチョコレート市場が「バレンタイン需要に依存する形」から転換しつつある可能性が考えられます。

図2:3大ECモールチョコレート月別売上構成比(年次)

2024年の3大ECモールにおけるチョコレート市場は、バレンタイン時期の売上構成比の減少など、変化の兆しがみられた年と言えるでしょう。
次からは、バレンタイン時期(1月・2月)に焦点を当てて市場動向を詳しくみていきます。

バレンタイン時期(1月・2月)のチョコレート市場変化

バレンタイン時期(1月・2月)の3大ECモールのチョコレート市場をみると、2024年のバレンタイン市場は、「平均単価」が上昇する一方、「販売数量」が減少した結果、前年割れで推移しています。(図3)

図3:3大ECモールチョコレート市場(1月・2月)売上・数量・平均単価推移

次に、3大ECモールのチョコレートジャンルを3つに分類し、その動向を確認しました。
分類した3つのジャンルは、以下の3つのジャンルで分類しました。
 1:無垢チョコ :板チョコ・バーチョコ ジャンル
 2:製菓用   :製菓用チョコレート・割れチョコジャンル
 3:その他(贈答用含む) :上記1、2以外のジャンル全て

チョコレート市場をジャンル別推移を確認すると、2024年は「無垢チョコ」「その他(贈答用含む)」が前年割れの一方で、「製菓用」は好調に推移していることがわかります。
2024年バレンタイン市場は、ギフト・自己消費関連の商品が苦戦する一方で、製菓用など「手作りチョコ」の需要は高まり、売上伸長が起きたと考えられます。

図4:3大ECモールチョコレート市場ジャンル別推移と前年比

2:チョコレート市場競合動向

バレンタイン時期TOP5メーカーの動向

次に、チョコレート市場の競合動向として、バレンタイン時期におけるTOP5メーカーの売上推移を確認すると、上位5社のうちE社を除く4社が前年割れで推移していることが分かりました。(図5)
今回はジャンル別構成比で売上規模が大きい「その他(贈答用含む)」ジャンルの構成比が高い、1位のメーカーA、2位のメーカーB、そして上位5社以外で構成される「その他」で動向を分析し、それぞれのメーカー動向からチョコレートジャンルの「どのジャンル」の売上が下がったのかをを深堀りします。(図6・図7)

図5:3大ECモールチョコレート市場TOP5メーカー年度別推移

図6:メーカーA・メーカーB・その他メーカーの「その他」ジャンル推移
図7:メーカーA・メーカーB・その他メーカーの「無垢チョコ」「製菓用」ジャンル推移

メーカーA・メーカーB・その他メーカーの動向を詳しく見ると、「その他(贈答用含む)」と「無垢チョコ」ジャンルの苦戦がみられます。また、この傾向は特定の1社に限らず、少なくとも複数社、さらには「市場全体」に広がっている可能性もうかがえます。

チョコレート市場売れ筋商品TOP10(1月・2月)

バレンタイン時期のチョコレート市場における売れ筋商品から、消費者ニーズの変化を探ります。
今回は、2023年・2024年の3モールそれぞれの売上TOP10を確認したところ、上位商品に大きな変化は見られませんでした。(図8)
しかし、モール単位で詳細をみていくと、それぞれに特徴がみられます。
それぞれの特徴としては、以下のことが言えそうです。
・Aモールでは高カカオチョコが、多くランクイン
・Bモールでは海外高級チョコと国内ギフトチョコが多く、高カカオチョコなどはランクインしていない
・Cモールは2023年には高級海外チョコと国内ギフトチョコが、2024年には国内ギフトチョコがなくなり、割れチョコが多くランクインしている

モールごとに異なる商品傾向が浮かび上がり、消費者の好みがモールの特性に応じて分化している様子がうかがえます。

図8:3モールそれぞれの売れ筋TOP10

図8の商品を海外高級チョコ・国内ギフトチョコ・割れチョコ・高カカオチョコBOX・その他と分類し、売上推移を確認すると(図9)3モール合計で、2023年・2024年と同じランクイン数である「海外高級チョコ」(どちらも15品)でも売上が低下しており、2023年・2024年でランクイン数が変化した国内ギフトチョコ・割れチョコなどは、売上の増減がより顕著にみられます。

図9:各モール上位10品ジャンル別売上推移

2024年のバレンタイン時期におけるチョコレート市場をまとめると、平均単価以外の項目で前年割れが起きていることがわかりました。
そして、3つのジャンルに分類して動向を分析した結果、売上減少の主な要因は「その他(贈答用含む)」と「無垢チョコ」ジャンルにあると判断できます。TOPメーカーの推移を見ても、これらの2ジャンルの苦戦は1社のみに限らず、複数社、場合によっては「市場全体」で起きている可能性が伺えます。
これらの状況は、言い換えると2024年バレンタイン時期のチョコレート市場は、「ギフト需要・自己消費需要」が減少し、手作り向けの需要が増加していたと言えそうです。

次に、バレンタイン市場【全体】の市場動向を確認していきます。

3:バレンタイン市場【全体】の市場動向

<バレンタイン市場の定義>
商品名に「バレンタインデー」「バレンタインギフト」「バレンタイン」のいずれかを含む商品を対象として抽出バレンタイン市場としてまとめる

バレンタイン市場【全体】の動向

バレンタイン時期の市場全体を確認すると、売上・数量・平均単価すべてが前年割れで推移していることが分かりました。特に月別推移を確認すると「1月」の前年割れが大きく、全体の売上減少に大きく影響していることがわかります(図11・12)。

図11:3大ECモール バレンタイン【全体】市場
図12:3大ECモール バレンタイン【全体】市場 月次推移


ジャンル別でみるバレンタイン市場【全体】

「バレンタイン」といえば「チョコレート」をイメージする方が多いかもしれませんが、実際の市場を構成するジャンルでチョコレートはどれほどの割合を占めているのでしょうか。市場全体におけるジャンル別売上構成比を確認しました。(図13)

図13を見ると、バレンタイン市場を構成するジャンルの中で「チョコレート」が最も高い構成比を示し、市場全体の半分以上を占めます。注目すべきは2023年から2024年にかけて構成比を2ポイント上昇させた「化粧品ジャンル」です。

化粧品ジャンルの売上構成比が上昇した背景には、「外出頻度の増加」が影響していると考えられます。2023年と2024年の1月・2月を比較すると、2024年はオフライン市場の回復に伴い、百貨店を中心としたチョコレートイベントの増加や出社頻度の上昇など、外出の機会が増えたことが挙げられます。外出機会の増加により、見た目に気を遣う場面が増えたと感じている方も多いのではないでしょうか。また、プチギフトとしてコスメ系商品の需要が拡大している点も注目されます。さらに、バレンタイン限定の化粧品セットやコフレ商品がSNSで話題となったことも、化粧品ジャンルの成長を後押しした要因と考えられます。

図13:バレンタイン市場ジャンル別売上構成比 2023年(左図)・2024年(右図)

このように、化粧品ジャンルが成長を見せる一方で、各モールの売上上位ジャンルを詳しく確認すると(図14)、共通する傾向と異なる傾向が見られました。

共通の傾向:チョコレートが1位を占め、ビスケットやケーキ・洋菓子などスイーツ系ジャンルが多くランクイン
異なる傾向:モールによっては家電や服飾雑貨など、スイーツ以外のジャンルも上位にランクインしている

さらに、各モールのTOP10ジャンルをスイーツ、化粧品、家電、花・観葉植物、服飾雑貨・その他に分類し、売上前年比の成長率を確認すると「化粧品」が最も高い成長率を示しました。(図15)

図14:3大ECモール バレンタイン時期の売上上位ジャンル
図15:3大ECモールTOP10ジャンルでの成長率

4:バレンタイン市場の今後と予測

2024年の3大ECモールにおけるバレンタイン市場は、2売上が減少していることがわかりました。この減少は、バレンタイン市場全体とチョコレート市場の両方で起きており、特に売上の中心である「贈答用・自己消費」のジャンルで苦戦が見られます。

この苦戦の主な要因は、「オフライン回帰」であると考えられます。2023年1月~2月はコロナ渦の最終局面であり、多くの消費者がECを利用する傾向がありました。しかし、2024年の同時期にはその影響がなくなり、大手百貨店をはじめとするバレンタインイベントが盛況で、「珍しいチョコレート」「有名ブランドのチョコレート」「チョコレート専門店の商品」がオフラインで容易に入手できるようになったことも影響していると考えられます。イベント規模の拡大も相まって、購入場所として、オフラインが優先されるようになった可能性があります。
こうした傾向は今年も続くと予測されますが、一方で出社頻度の増加やオフライン会場の混雑により、購入したくてもなかなかいけない消費者が増えることも考えられます。このような状況下で、ECが再び活用される可能性は十分にあります。また、成長を見せている化粧品ジャンルの販売方法を工夫することで、市場全体が復調する可能性も期待されます。
本格的なアフターコロナから2回目のバレンタイン商戦となる2025年、どのように推移していくのか注目です!

過去のバレンタイン記事はこちら:「2024年、ECのバレンタイン市場はどうなる?3大ECモールの2023年の動向から予想

この記事を書いた人

山本 真大(やまもと まさひろ)
株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト

株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタートし、主に店頭での販促施策を担当。その後IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在、ECデータアナリストとして、数々のブログや電子書籍の執筆、セミナー登壇に関わる。
セミナー登壇数は20を超え、オフラインの経験とオンラインのデータ分析をもとにした、セミナー内容は参加者からも好評をいただいている。

Nint ECommerceに関して

日本国内のEC市場の約7割を占める3大ECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)の売上・販売数量をモール別、ジャンル別、ショップ別、商品別に分析できる画期的なツールです。Nint ECommerceを活用いただくことで、以下のイベント対策を効率的にサポートしています。

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【出典:「バレンタイン市場は縮小!?2024年の最新動向と2025年の展望」(2025年1月27日公開)】
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