3大ECモール市場の2023年12月を振り返る!
こんにちは、Nintデータアナリストの山本です。
今回、2024年度最初のブログ記事とのことで、2023年度を一度振り返るためにまずは12月の売上をチェックしようと、Nint ECommerceを操作。全モール・全ジャンルのショップ単位で販売する商品の売上ランキングをチェックしたところ、売上上位商品で「なんと!」と思う事態が起きていました。
まずはこちらのランキング表をご覧ください。
分かりますでしょうか。総合順位の1位と2位が「同一ジャンル」の食品になっていました。
一般的に、食品はEC化率が低い傾向であり、平均単価も低い傾向があります。そのため、EC市場においては取り扱いづらい分類に入るジャンルです。しかし、12月の売上1位・2位は食品が占めています。この食品がどのような商品か、読者の皆さまは想像できますでしょうか。今回はこの、2023年12月に国内の3大ECモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング)のショップ単位の取扱商品ランキングで総合売上1位となった、とある「食品」に関して詳しく分析していきます。
2.繁忙期で年間売上の7割を占める
3.市場は2022年比較では前年割れをするも、2019年比較では165%上で推移
3大ECモールにおける「ある食品ジャンル」の市場推移
早速、3大ECモールの食品ジャンルの下位階層にある、「ある食品」の市場を見るために、各モールの売上推移を確認します。
各モールとも売上は11月より急激に立ち上がり、12月にピークを迎えることが分かります。また、一部のモールに限った動きではなく、「3モール共通」の動きであることが分かります。この上昇幅は非常に大きく、結果として12月のショップ単位の商品別売上総合ランキングで1位になるショップがあるほどです。季節性が非常に高く、12月にかけてEC市場で販売が伸長する、この「ある食品」の正体、それは「カニ」です。
EC市場における市場規模推移
EC市場で「カニ」が売れる?と疑問に思う方も多いかと思います。カニ市場の売上が急上昇する11月・12月の各年の市場規模を、2019年の市場規模と比較してみます。
ECモールのカニ市場は、コロナ禍である2020年に前年比140%以上で成長、その後、2021年、2022年と成長を続け、2023年では前年比96%で推移しました。2022年からの前年割れ要因としては、「オフライン市場」での購入と「需要の分散」による影響が考えられます。前年割れとなったカニ市場ですが、その市場規模は、2019年と比較すると165%以上と、コロナ禍前と比べて成長していることが分かります。ECのカニ市場は、24時間いつでも手軽に注文でき、自宅まで配送してくれる利便性が消費者にも浸透した結果、コロナ禍前よりも成長している市場と言えます。
繁忙期の売上比重
繁忙期における「カニ」ジャンルは年間カニ市場のどのくらいの割合を占めるのでしょうか。2019年・2023年を比較し、構成比の推移と需要変化を確認します。
繁忙期の構成比は、2019年・2023年共に、年間売上の7割以上を占めることが分かります。
繁忙期のみで、売上構成比が7割を越える市場は多くないため、カニ市場がいかに特徴的であるかが分かります。
構成比を細かく確認すると、79%である2019年に対し、2023年は75%と減少しています。2023年は10月から「ふるさと納税」の法改正があり、9月に駆け込み需要がありました。通常は12月にふるさと納税による繁忙期がきますが、2023年は9月に一部の先行需要が発生した結果、繁忙期の売上構成比が減少した可能性があります。今後、「ふるさと納税」需要が12月へ戻る可能性が高いこと、現在ふるさと納税市場自体が上昇している為、ひょっとしたら2024年は需要期の売上構成比が上昇するかもしれません。
繁忙期の生産者構成比推移
カニ市場は、上位の5社の生産者で市場シェアの約6割を占めていることが分かりました。
注目は2022年から2023年にかけて市場シェアを3%上昇させたC社です。C社の動向と市場の変化を、2023年度のカニ市場で69%の構成比を占める(図7)Aモールにて詳細を確認します。
好調企業・売れ筋価格帯の推移
Aモールのカニ市場を「価格」「生産者」「売上規模」の3点の切り口で可視化するNint ECommerceの「ジャンル価格分布機能(メッコチャート)」で、売れ筋商品の価格帯毎の生産者のシェアを確認していきます。
ジャンル価格分布からいくつか確認できる内容があります。
1つ目は、2022年から2023年にかけて、中心価格が「高単価化」している点です。
2022年では6,000円~7,999円と14,000円~15,999円が中心価格となっていますが、2023年は8,000円~9,999円と16,000円~20,000円が中心価格に変化しております。
2つ目は、2023年に中心価格となった価格帯で好調企業C社がシェア率を上昇させた点です。C社好調要因は、高単価化によりC社のシェア率が上昇したのか、C社のシェア率が上昇したことで、価格帯が押し上げられたのか、判断していく必要がありそうです。
C社を取り扱うショップAの「商品点数」と、「売上」を価格帯別で確認してみます。
注目すべき点は、6,000円~7,999円の商品点数の増加と売上の関係、8,000円~9,999円の商品点数と売上の関係です。8,000円~9,999円の商品点数は2023年にかけて微増傾向ですが、大きく売上を伸長させています。一方で、6,000円~7,999円の商品点数も増加していますが、売上伸長・規模はそこまで大きくないことが分かります。これらのことから、販促面の考慮は必要ですが、「市場」は高価格帯の商品が求められる傾向にあり、C社好調要因は高価格帯への消費者ニーズがシフトしたことによる影響の可能性が示唆されます。
2019年・2022年・2023年の各12月に売上構成比が80%となった商品に関して、商品名に使用される頻度の高い「キーワード」を確認いたしました。各年で大きな違いは見られませんが、「2022年・2023年」のみ多く現れる傾向、減少した傾向が見られます。
<近年上昇傾向のキーワード>
・ポーション
・プレゼント
<近年減少傾向キーワード>
・ボイル
<変化の少ない使用率上位キーワード>
・カニ/かに/蟹/ズワイガニ
これらに加え、さらに上位TOP10商品には、「送料無料」のワードが増加傾向でした。
また、「Kg」単位での表示も上位TOP10商品に見られる傾向です。
実際にC社が運営するショップの売れ筋No.1商品は、2022年・2023年で変化は見られませんが、「Kg表示」をしたことで、「売上数量」が2倍近くまで増加しました。もちろん販促などの影響もありますが、「Kg表示」は消費者にとって比較基準となりやすいのかもしれません。
まとめ
今回、12月をピークに11月から市場が一気に上昇するジャンルだと判明したカニジャンルですが、現在の市場規模は横ばい〜縮小傾向が見られます。EC市場におけるカニ需要を左右する要素として「ふるさと納税」や「オフライン市場の動向」が影響しそうです。一方で、EC市場のカニジャンルにおいて繁忙期である11月・12月はカニジャンル全体においても7割を超える売上を占めるため、非常に重要な月であることも事実です。好調な生産者・ショップから見ると、市場の高単価化が起きており、好調メーカーはその中で、販売方法として「Kg表示」を徹底したことがうかがえます。「Kg表示」によりユニットプライス・お得感を生み出すことと、「送料に関しての言及」をすることがポイントとなりそうです。
いかがでしたでしょうか。「なるほど」と思うことが一つでもあれば幸いです。本年も引き続き皆さまにとって、意外な発見・気づきが一つでも発信できるよう努めてまいります。
引き続き当ブログをよろしくお願いします。
備考
・今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。
・Rakuten
食品>魚介類・水産加工品>カニ
・Yahoo!ショッピング
食品>魚介類、海産物>カニ
・Amazon
食品・飲料・お酒>生鮮魚介類・水産加工品>カニ
調査対象:Nint推計データ
Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。
データ抽出期間:
2019 年1⽉〜2023年12⽉(※本稿における Nint 推計データは 2024年1⽉時点のものを使⽤)
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【出典:Nint Blog「3大ECモール市場の2023年12月を振り返る!」(2024年2月7日公開)】
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■本記事について
作成:山本 真大(Masahiro Yamamoto)
編集:瀧坂 義尚(Yoshinao Takisaka)、村上 咲(Saki Murakami)
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