2023年トレンド商品のchatGPT、スラムダンク。3大ECモール市場への影響をチェック!
2. 1位「ChatGPT」は来年も継続ヒット!?3位「SLAM DUNK」の売上動向の違いから予測する!
3. 最も影響を受けたジャンルは「書籍」ジャンル!「SLAM DUNK」が上位を独占
こんにちは、Nintデータアナリストの山本です。このくだりでのブログ記事も段々と定着してきましたね!
突然ですが、皆さんはテレビやニュース、SNSなどで話題となった商品・出来事の関連商品が、EC市場でどのような動きを見せたか、気になったことはありませんか?
2023年も残すところ、あとひと月ほどになり、今年の出来事やトレンドって何があっただろうか。と考えることが急増している日々を送る筆者ですが、改めて2023年のトレンドはどのようなものだったのか。世間の話題をさらった商品は、どのような商品だったのか。どんな流行が起きたのか。しかもそれはEC市場ではどうだったのか。市場と同様にEC市場でもトレンドが起きているのかが気になってたまらなくなってまいりました。
幸い私の勤めている株式会社Nintには国内のEC市場の約7割の売上を占める、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの3モールの推計売上・推計販売量等を見ることが出来るツールがある・・・ だったら一度調べてみよう!となり、今回のブログ執筆に至りました。
今回は日経トレンディ誌の2023年12月号で発表された「ヒット商品&予測商品ベスト30」から、関連商品が楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングと日本を代表する3大ECモールでどのように売れたか、その動向を調べていきたいと思います。
社会現象とまでなったものや、大きく知名度を上げたものが数多くランクインする中で、その影響はEC市場にも現れたのか、チェックしていきます。
目次
今回調査する2023年のヒット商品・ワードについて
ではさっそく、今回の調査する2023年ヒット商品についてまとめます。今回は、日経トレンディ誌の2023年12月号で発表された、2023年ヒット商品ベスト30から1位と3位の商品を対象として、調べようと思います。(※2位はchocoZAPのため、直接関連する商品をEC市場での調査が難しい為割愛)
1位は「ChatGPT」3位は「THE FIRST SLAM DUNK」でした。調査にあたっての定義は以下としました。
■調査概要
1:調査期間
2022年度:2021年11月~2022年10月
2023年度:2022年11月~2023年10月
2:調査方法
上記該当期間において1位・3位の商品の「商品名」を各モールで検索。
商品数と売上を集計する。
商品検索の方法は以下とした。
・ChatGPT:
「ChatGPT」「チャットGPT」のどちらかに検索される商品名を含む製品。
・THE FIRST SLAM DUNK:
「スラムダンク」「SLAMDUNK」「SlumDunk」の何れかで検索される商品名を含む製品
→全階層で表示された「商品上位300品」を集計対象とした。
→集計は各モール毎に行い、集約・とりまとめた。
※検索結果が300品を超えた場合は各モールの上位300品を集計対象と定義
3:調査手段
Nint ECommerce「業種分析」「人気商品」機能を活用
結果は以下の通りです。
ChatGPT関連商品の商品は2022年度から比べ2023年度では前年比「4555%」と驚異的な成長となっております。同様にSLAM DUNK関連商品に関しても、前年比382%と大きく成長しました。どちらに関しても、2023年度において、3大ECモール市場でも成長したことが確認できます。また、急激な成長という点においては、以前より知名度のあったSLAM DUNKと比べ、ChatGPTが非常に高い数値となっている点からも、2023年度でChatGPTが世に与えた影響の大きさがEC市場からも伺える結果となっております。
関連商品の月別推移
関連商品が2022年度から2023年度にかけて大きく伸長したことは、年間売上の推移により確認することができました。一方で、その関連商品がいつ頃からその需要が高まり、流行となったのかに関しては、年間推移では分からない点があります。
次は、月単位の粒度とし、その推移を確認しました。
図2・3から売上推移を見ると、ChatGPTは4.0がリリースされたのち大きく増加傾向を示しているのに対し、SLAM DUNK関連商品は2022年12月の映画公開により数字が大きく増加、その後緩やかに減少する傾向が起きています。
どちらも2023年度の社会に影響を与えた商品(コンテンツ)ですが、その動きは全く異なっていることが分かります。また、2つの関連商品を同じ売上軸でまとめた図4も併せてみることで、新たな事実が分かりました。
図4より、2023年8月~10月にかけて両者の売上が拮抗しはじめ、10月単月ではChatGPT関連の商品売上が堅調に伸長することで、SLAM DUNK関連の売上を上回る結果となっています。図2~図4に関して分かったことは以下の通りです。
■ChatGPT関連商品
売上は緩やかに上昇傾向、今後も伸びていく可能性を秘めています。
→2024年もヒット商品となる可能性。
■SLAM DUNK関連商品
映画公開が起爆剤となり、一気に売上のヤマを作る結果となりました。その後も需要に関しても急激な低下は起きず、映画公開が終了する8月までの期間で緩やかに減少が続きました。
→2024年では起爆要素がないと再燃要素は低そうと予想されます。
■売上の波(ヤマ)
社会現象になるような事象が発生すると、EC市場内でも一気に反応(SLAM DUNK関連商品の12月の売上から)する傾向が伺えます。また、継続性は他のヒット商品を確認する必要があるが、3カ月・半年と緩やかな低下が見られるようです。
→ヒット商品は3カ月・半年の動向を注視してみる必要がありそうです。
一言でヒット商品と言っても、その年「限定」のものと、「継続性がある」ものの2パターンが月別推移から予測できるのはトレンド把握においても非常に有益であると思います。
関連商品の中心ジャンルを売上構成ジャンルから確認
次は、関連商品を構成するカテゴリーの中で、最も大きいジャンルを確認していきたいと思います。図1で使用した集計結果に、「書籍」「その他(書籍外:電子書籍・洋書・フィギュア・DVD等)」のジャンルを割り振り、その動向を確認しました。結果は以下の通りです。
図5、6より、2022年のChatGPT関連商品は書籍ではないジャンルで構成されていましたが、2023年には書籍の構成比が59%と約6割を占める結果となっております。またSLAM DUNKに関しては、元々書籍ジャンルの構成比が高かったですが、2023年にはその構成比が90%と9割を占めるように推移しました。
このように、今年のヒット商品に関連する商品としては、「書籍」ジャンルの占める割合が大きいことが分かります。
ここで気になるのが、「書籍ジャンル」において、これら2つのヒット商品が「どのくらい影響を及ぼしたか」という点ではないでしょうか。果たして「書籍」という大きなジャンルの中で、関連商品は上位にランクインするのでしょうか。3大ECモールの書籍ジャンルに関しても調査しました。
SLAM DUNKが上位を独占!?一方ChatGPTは…
では早速3大ECモールにおける書籍ジャンルの2022年度・2023年度のTOP10を確認したいと思います。
図7から、SLAM DUNKが1品から7品と前年に比べ、+ 6品ランクインしていることが分かります。(同一商品名称は、複数のショップにて同一商品が販売されているため)
このことからも、2023年度の3大ECモール書籍市場において、如何にSLAM DUNKの影響が大きかったかが分かります。
一方で、ChatGPT関連書籍が上位に入らない点についてですが、上位を占める商品は「全巻セット」などいずれも単価の高い商品が集中していることが要因ではないかと思われます。実際にChatGPT関連の書籍販売数は、SLAM DUNK関連書籍の販売数の約89%となっておりますが、金額では約16%となっております。これは、SLAM DUNK関連書籍は全巻セットでの販売が中心であるため、平均単価9,936円と高いのに対しChatGPT関連書籍は1冊販売が中心で、平均単価は1,635円となることで、平均単価の差が実に6倍以上も違いました。
しかしながら、如何に平均単価が高いとは言え、2023年の書籍ジャンルにおいて、なぜSLAM DUNKがここまで上位を独占できたのか疑問に思う方もいらっしゃると思います。
何か特殊な施策・特徴があるのか、電子書籍が定着化しつつある昨今において、「紙書籍」であるSLAM DUNK がなぜここまで好調に推移し、売上上位を独占したのでしょうか。いくつかの可能性を考えました。
①電子書籍では読めない特徴
SLAM DUNKの単行本は2023年11月現在、漫画アプリや電子書籍では読めません。漫画のSLAM DUNKを読む場合は、必然的に「紙書籍」での購入や漫画喫茶や、レンタルショップでの対応が必要となります。
②映画公開による、新規ユーザーの登場
映画公開の影響により、新規のファンが新たにSLAM DUNKを読みたくなった為、購買が発生した可能性が考えられます。また、当時(1990年~1996年)影響を受けた世代が、現在の親世代となり一巡したことで、親子で再び・新規にファンとなり購買に繋がった可能性が考えられます。
③オンラインならではの利便性
連続単行本の書籍を読もうとした際に、オフラインの書店で購入しようとしたら、次巻が無かった。そのような経験をされたことは皆さんも一度はあるのではないでしょうか。オフラインの書店ではこのような、所謂歯抜けなどが起きる可能性もあり、購入先としてオンラインが選ばれやすかった点が考えられます。また全巻となるとサイズ・重量もそれなりとなる中で、注文すれば自宅まで届くECモールの特徴が、見事にマッチした点も考えられます。
④本編が終了し、「全巻」で読み切れる利点
刊行し続けている単行本の場合、続きが読めない、話が途中で止まってしまう等、楽しみである一方、不満となる点がありますが、SLAM DUNKは既に連載が終了し、単行本も全て発刊済みのため、「一気に」読めることが利点と感じられている可能性が考えられます。
このような要因が重なり合い、今回の書籍ジャンルで上位を独占したのではないかと考えられます。
書籍ジャンル上位商品の傾向から読み解く3大ECモール書籍ジャンルの特徴
今回の調査で、書籍ジャンルの売上上位商品を見ていくと、2つの特徴があることに気が付きました。
一つ目は、売上上位商品は「平均単価」が高い傾向がある点です。
書籍ジャンルの平均単価が1,400円台のなか、TOP10商品は2022年では9品が、2023年では10品全てが平均単価を超える価格でした。
二つ目は、全巻セット・図鑑などの書籍が多くランクインしている点です。
これは一つ目の特徴である「平均単価が高い」へと繋がる特徴ですが、書籍ジャンルでの売上上位商品は図鑑や全巻セットなどが中心で、単行本や週刊誌、月刊誌などはランクインしていないことが分かります。これにはいくつか理由があり、週刊誌や月刊誌、単行本などは1週間~数か月単位で最新刊が出るため、商品単品での売上が上位へとランクインしづらいという特徴がある点が挙げられます。また、1品当たりの平均単価も低く、先ほど挙げたChatGPT関連書籍が上位に入らなかった要因がこちらでも想像できます。2022年に特典付きで平均単価が高くなった単行本がランクインしている点からも、「単価」×「数量」の点において、単行本のセットや図鑑などが増加する傾向はありそうです。
電子書籍の登場により、徐々にその売上が減少している3大ECモールの書籍市場においては、現在書籍の総販売数量に限界が来ております。紙書籍・電子書籍の市場規模は全国出版協会・出版科学研究所が2023年1月25日に発表した出版月報1月号によると、紙と電子書籍を合算した出版市場(推定販売金額)は、前年2.6%㌽減の約1.6兆円16,305億円とマイナス成長と発表しております。内訳は紙出版は前年6.5%㌽減の約1.1兆円11,292億円、電子書籍は前年7.5%㌽増の約0.5兆円5,013億円です。このような背景もあるため、平均単価>>>販売数量の順で、売上ランキングを決める要素となりそうです。
2023年トレンド商品の3大ECモール市場への影響まとめ
2023年にヒットした商品1位「ChatGPT」3位「SLAM DUNK」が日本の3大ECモール市場にどのように影響を与えたのか、今回確認した調査結果によると、「関連商品」の大幅な伸長が3大ECモール市場でも確認できました。しかしながら、そのヒット商品の「動き」にはそれぞれ異なった特徴がみられます。SLAM DUNKは映画公開を皮切りに新たなファン・以前からの熱烈なファンを増やし、原作である紙書籍での単行本セットでの販売により、3大ECモールの書籍市場をけん引しました。ChatGPTに関してはGPT4.0が認知され始めることにより、関連商品の売上は急激に上昇し今もなお継続して成長しております。
一方SLAM DUNKは起爆剤となった映画効果開始をピークに2023年の中で徐々に売上が減少しております。売上減少は3カ月・半年単位で推移を見ることで、そのブームが継続傾向か、判断基準の一つとして見れる可能性があります。ヒット商品に関して言えば、ChatGPTは次年度も伸長する可能性を秘めており、SLAM DUNKは新たな起爆剤となるような出来事が必要となるように思えます。
書籍市場として話を広げると、売上上位へのポイントは「平均単価」が非常に重要であることが分かりました。単価上昇には完結しているマンガのセット品での販売などが有効となりそうです。
今回、オフラインでのヒット商品がEC市場でどのように推移したかを初めて調査しましたが、いかがだったでしょうか。想像した通りだった・異なっていた等あるかと思いますが、Nintでは3大ECモール市場の分析から新たなインサイトをお届けいたします。
よろしければ過去の記事もご覧いただき、ビジネス・市場分析の一助としていただければ幸いです。
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備考
・今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。
・Rakuten
本・雑誌・コミック ジャンル以下
・Yahoo!ショッピング
本・雑誌・コミック ジャンル以下
・Amazon
本 ジャンル以下
調査対象:Nint推計データ
Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。
データ抽出期間:
2021 年1⽉1日〜2023年10⽉31日(※本稿における Nint 推計データは 2023年10⽉時点のものを使⽤)
【転載・引用について】
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【出典:2023年トレンド商品のchatGPT、スラムダンク。3大ECモール市場への影響をチェック!」(2023年12月1日公開)】
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■本記事について
作成:山本 真大(Masahiro Yamamoto) /デジタルマーケティングUnitアナリスト
編集:村上 咲(Saki Murakami)/ デジタルマーケティングUnitエディター
:瀧坂 義尚(Yoshinao Takisaka)/デジタルマーケティングUnitユニットリーダー 兼ブログ監修
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