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仮装・コスプレ市場はコロナ禍で激変!? 価値観の変化をハロウィン・クリスマスより読み解く

こんにちは、Nintデータアナリストの山本です。

10月に入り、最近は日没時刻もどんどん早くなりました!本格的な秋冬の到来ですね。10月のイベントと言えば、ハロウィンを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ハロウィンはこの10年間でクリスマスに次ぐイベントとして成長し、大人気テーマパークでもハロウィンイベントを開催、1年の中で一番人気のイベントとなるなど、定着化が進んでいます。

そんなハロウィンで欠かせないものと言えば「仮装グッズ」ですが、皆さんはどこで購入するでしょうか。大手ディスカウントストアや百貨店、ECサイトでの購入を思い浮かべる方が多いと思います。

今回は、EC市場の約7割を占める3大ECモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング)の仮装・コスプレジャンルの動向から、そのトレンドを見ていきます。

本記事のポイント3点
  1. 仮装・コスプレジャンルは10月・12月に「ヤマ」が来る!
  2. 市場規模だけでは見えない、単月比較!市場は既に回復傾向!?
  3. コロナ禍前後で需要が変化!?上位商品の変遷からニーズを読み解く!

やっぱりハロウィンは仮装!?相関係数から判断

本当にハロウィンと言えば仮装なのか?仮装はこの時期に興味・調査されているのか。ハロウィンと仮装の関係を、Googleトレンドにて検索しました。

図1:GoogleTrends「ハロウィン」「コスプレ」「仮装」ワードの人気度推移

この結果を見ると、「ハロウィン」と「仮装」に関しては非常に類似した動きが見られます。「コスプレ」も同様にハロウィン時期に「仮装」と同様に検索される傾向が見られました。

二つの相関関係を示す指標に、「相関係数」というものがあります。相関係数は±1が最大となり、数値が+1に近づくと「正の相関」(比例関係)、-1に近づくと「負の相関」(反比例関係)と判断できます。
「ハロウィン」と「仮装」の相関係数は、0.94となり、これは非常に強い相関関係であると言えます。

同様に各ワードの相関係数を調べました。

図2:ハロウィン・コスプレ・仮装ワードの相関係数確認

このように確認すると、「ハロウィン」=「仮装」とイメージしてもよさそうです。

次はそんな仮装・コスプレジャンルについて需要期を見ていきたいと思います。

市場ピークは10月!12月にも需要あり!

ハロウィンは仮装のイメージ。この点は先ほどの相関係数からも判断できますが、3大ECモール市場は果たしてGoogleTrendsの人気度推移と同じ動きをするのでしょうか?ひょっとすると毎年8月・12月に開催されるコミックマーケット時に仮装の需要が高まり、検索需要が上昇しているのかもしれません。そこで、気になる年間の売上推移を「季節指数」を用いて確認しました。

※季節指数は年間売上の平均値を100とし、各月の数値が100以上となれば平均より需要のある月と判断する指標の一つです。これにより、月別のトレンドを確認いたします。

図3:3大ECモール仮装ジャンル季節指数月別推移

図3の結果から、3大ECモールの仮装ジャンル市場は、10月にピークを迎え、12月にも10月に次いだ「ヤマ」があることがわかります。
興味深いことにこの傾向は、コロナ禍であった2020年~2022年とコロナ禍以前であった2019年を比較しても大きな変化はありませんでした。

一方で多少差が見られたのは、10月のヤマの「高さ」と12月での跳ね上がりの高さではないでしょうか。これは10月、12月に以下の事象が起きていた可能性が示唆されます。

  • 10月
    仮装ジャンルの中心用途は「ハロウィン」※外出使用 その為、外出自粛が緩和されるに伴い「反動需要」が起きている可能性があります。
  • 12月
    コロナ禍の特徴として、10月の需要「ハロウィン(外出)」に対し、おうちパーティー需要が上昇。その傾向として、2020年の季節指数が最も高く、次いで2021年、2022年となっています。

総じて10月・12月には「外・内」別々の需要が存在しており、そのことが2つの「ヤマ」を作る結果となっているようです。

仮装・コスプレ市場は復調傾向!最需要期は既に回復済み!

仮装・コスプレ市場の需要期に関しては確認できました。次は各年の仮装・コスプレジャンルの推移を見ていきたいと思います。
調べていくと、最需要期の10月・12月に関して、市場の年間売上推移とは違う動きをしていましたので、<年間推移><10月単月><12月単月>で各年の推移を確認していきます。

図4:3大ECモール 仮装ジャンル 売上規模推移(年間)
図5:3大ECモール 仮装ジャンル 売上規模推移(10月単月)

年間

2019年(コロナ禍前)がピークとなっており、2021年にかけて前年割れが続きました。これにはいくつかの要因が考えられます。

1つ目は「コロナ禍」による外出自粛・行動制限による影響です。毎年経済産業省が発表する電子商取引に関する市場調査によると、EC化率は毎年増加傾向にあります。特にコロナ禍となった、2020年はEC市場規模・EC化率が大きく伸長しております。
そうした背景がある中でも、前年比95.8%で推移した2020年、前年比92.4%で推移した2021年は仮装自体の機会減少・ニーズの減少が影響していることが考えられます。
一方で、外出自粛・行動制限に関しては2020年の方が厳しい印象があるなか、2021年の売上が、2020年の売上に比べ92.4%(△7.6ポイント)となっていることは、別の要因もあるのではないかと考えられます。

2つ目の要因は「製品寿命」「消費サイクル」「商品需要」による影響があった可能性です。仮装は「ハレの日」に1度~数回の使用であれば、翌年も使用できる可能性があります。近年は衣類の品質も上昇しており、毎年購入していない可能性が考えられます。ハロウィン仮装に関しては毎年の旬を取り入れながらも、12月のクリスマス需要に関しては子供へはプレゼントとしてバリエーションがありますが、大人はサンタクロースの衣装が多くバリエーションが少ないため、「毎年購入するほどではない」と思う消費者も一定数いるかと思います。

3つ目の要因は、コロナ禍よりイベント中止が恒常化したことで、仮装する機会であるハロウィンイベントの中止・未実施が2020年に比べ容易に推察出来る状況が、2021年の方が整っていた可能性が考えられます。一方で、2022年はイベントが増えたこと、外出自粛や行動制限が緩和されたこと、ワクチン接種、解熱剤の普及などにより、市場は回復傾向になったと思われます。

アフターコロナの本年は2019年と同等水準まで回復する可能性もあります。イベント市場は行動量と比例関係になりやすいため、2023年の動向は興味深いですね!

10月単月

最需要期の10月単月で見ると意外な事実が見えてきます。先ほどの市場規模全体では2021年が最も落ち込んでいますが、単月では2021年には回復傾向へと転じ、2022年にはコロナ禍前の2019年を上回っております。これは先ほど述べた「商品サイクル」「自粛の反動」に加え、「お家需要」の増加による影響が考えられます。

12月単月

12月は更に特徴的な推移となっており、2019年~2022年の中で2020年が最も高くなっています。このことは、「外出自粛」や「行動制限」「相次ぐイベント中止」により溜まっていたフラストレーションをクリスマスの「ホームパーティー」で解消する、もしくは「在宅時間の増加」により家族での時間が増加、家族でせっかくのクリスマスなのでホームパーティを開催する。という流れが起きたのではないかと推察します。

市場全体と2つの需要月(10月・12月)で市場規模推移が異なるのは大変興味深く、2019年時の仮装・コスプレ需要と、コロナ禍を経た今の需要では、変化が起きているのではないかと思われます。

売れ筋商品が違う!10月と12月!

ここでは気になる売れ筋商品を需要期である10月と12月で集計、まとめました。
年度ごとにまとめましたのでその傾向を見ていきたいと思います。

図7:最需要期(10月)売れ筋商品TOP5
図8:需要期(12月)売れ筋商品TOP5

売れ筋商品の変遷を見るのは、消費者の心理の変化と世情のトレンドを把握する上で非常に重要です。図7の10月売れ筋商品を見ていくと、以下のことが見えてきます。

  1. 2020年(コロナ禍)においては、「子供サイズ」の仮装グッズが好調
  2. 2019年~2020年~2022年の変遷は「個」→「家族」→「個と家族のハイブリッド」と推移

1、2からコロナ禍により仮装してイベントに参加する「個」としてのハロウィンが、外出自粛やイベント中止により家族で行うイベントへと変化。2021年以降は、「個」で楽しむ層と「家族」で楽しむ層が混ざりあっているのではないかと推察します。

同様に図8からは、以下の点が読み取れます。

  1. 12月の仮装・コスプレ需要は、コロナ禍以前は「子供向け」の製品が中心
  2. 2020年にはその傾向がより現れた+女性向けサンタ衣装は「ホームパーティー」需要の始まり
  3. 2021年からは、子供向け商品はTOP5にランクインせず、「個」向けの商品がランクインしている

これらのことから12月の需要に関しても、10月同様変化が見られます。
家族のイベントに加え、ホームパーティなどの需要も増えてきているようです。

平均価格は2,800円前後!仮装・コスプレ市場平均単価推移

ここまで3大ECモールの市場規模・売上商品を確認してきました。次は仮装・コスプレ市場の平均商品単価推移を2022年1月~12月で確認していきます。

図9:2022年度3大ECモール仮装市場平均単価推移

図9より、需要期の10月・12月に平均単価が上昇する傾向が確認できます。需要期に単価が上がる要因としては、この時期に売れる商品の平均単価が、仮装・コスプレ市場の単価より高く、平均単価の底上げとなっていることが考えられます。現に、10月のTOP5商品の平均単価は3,727円、12月は4,613円となっており、平均価格より高いです。
このことから市場平均単価は、需要時期に連動して上昇する傾向がわかります。

中心価格帯は2,001円~4,000円!

図10:仮装市場の価格帯分布・売上規模(2022年度)

図10の価格、売上から判断すると、仮装市場は2,001円~4,000円の価格が中心であり、全体売上の44.9%を占めます。市場として売上の多くを占める10月の売れ筋商品TOP5の平均単価が3,727円であることからも、売れ筋価格帯はこの価格帯に集中しているようです。

仮装・コスプレ市場まとめ

ハロウィンを代表としてクリスマスにも需要がある仮装・コスプレ市場ですが、その市場は単月で比較する場合と、年間で比較する場合で見え方が変わってきます。

単月では10月の最需要期に関しては2021年から復調傾向が起きており、2022年にはコロナ禍前の2019年の売上を超えております。12月に関しては、コロナ禍である2020年がピークになっております。年間単位で市場を見ると、2021年が最も苦戦をしており、2022年になると復調傾向が見られます。

仮装・コスプレ市場は「コロナ禍」の影響を大きく受け、コロナ禍前とコロナ禍中~アフターコロナに関して、消費者の需要の変遷が見られます。その特徴が10月・12月の動きにと、2019年~2022年の売れ筋TOP5商品にも現れております。

10月は個人として楽しむハロウィンが、相次ぐイベント中止や外出自粛の影響を受け、家族で楽しむイベントに、その後は家族でも・個人でも楽しむイベントとして変化をしている事が、売れ筋商品より伺えました。12月に関しては、今まで家族(特に子供)が衣装を着る、プレゼントに用意されるものが、コロナ禍を期にホームパーティーでの仮装需要が起き、「個」でも楽しむものと変わってきています。

人々の価値観に影響を与えたコロナですが、今年はアフターコロナとして初のハロウィン、クリスマスを迎えます。この価値観のまま市場は推移するのか、それともコロナ禍前の価値観へと変わっていくのか、仮装・コスプレ市場の今後の動向に注目です。

備考

今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。

  • Amazon:ホビー›コスプレ・仮装 ジャンル以下
    おもちゃキッズコスチューム・変身・なりきりキッズコスチューム
  • 楽天市場:ホビー>コスプレ・変装・仮装 ジャンル以下
  • Yahoo!ショッピング:楽器、手芸、コレクション>コスプレ衣装 ジャンル以下
    ゲーム、おもちゃ>パーティグッズ>仮装、変装 ジャンル以下

※詳細ジャンルに関しては株式会社Nintへお問い合わせください。

調査対象:Nint推計データ

Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。

データ抽出期間
2019 年1⽉〜2022年12⽉(※本稿における Nint 推計データは 2023年9⽉時点のものを使⽤)

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【出典:Nint BLOG「仮装・コスプレ市場はコロナ禍で激変!? 価値観の変化をハロウィン・クリスマスより読み解く」(2023年10月12日公開)】

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