3大ECモールにおける「こたつ」市場は前年比120.5%で推移
こんにちは、Nintデータアナリストの山本です。
9月に入り、日没時刻が早まったり、夜過ごしやすい日があったりなど、少しずつ秋の気配が感じられる日々となっていますね!暑さ寒さも彼岸までという言葉があるように、東京都では秋彼岸時期(9月20日頃)から、最低気温が20度を下回る日が多くなったりもします。
寒い日のお供と言えば、冷えた体を温めてくれる「暖房器具」の存在は非常にありがたいですよね。暖房器具は季節商材と言われることもあり、仕掛けの時期・商品選定・展開がとても重要になります。これからの時期、暖房器具に関わる多くのメーカー様・流通業様・小売業様にとって、暖房器具の市場動向は気になるところではないでしょうか。
そこで今回は、3大ECモール(Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング)の商品・売上を確認できるNint Ecommerceを用い、暖房器具として「ストーブ・ヒーター」「ホットカーペット」「電気毛布」「こたつ」の季節トレンドを調査。その中でも私の大好きな「こたつ」によりフォーカスし、ピーク月の売れ筋商品のランキングと傾向について考察いたします。これから迎える寒い季節に向けた暖房器具市場・こたつ市場の把握にぜひお役立てください。
目次
こたつの需要はいつから?暖房器具全体の市場とあわせてチェック!
今回、暖房器具として「ストーブ・ヒーター」「ホットカーペット」「電気毛布」「こたつ」のジャンルを暖房器具と定義いたしました。季節指数の定義は、各年(1月~12月)の平均売上を100とし、2019年~2022年までの4年間の各月平均で試算しました。
※各モールの詳細ジャンルに関しては備考で記載しております。
今回抽出した暖房器具ジャンルでは、10月より需要が立ち上がり、12月にピークを迎えることがわかりました。特徴的なのは「こたつ」に関しては、11月がピークとなっている点です。これには、本格的な寒さが強まるにつれ、急速に暖を取れるストーブや、ヒーターへの需要が高まった結果、こたつの需要が12月に落ち着いた可能性や、机としての機能もあるこたつは、「衣替え」と同時期に買い替えや掛け布団の交換などの需要が起き、結果として11月にピークを迎えている可能性などが考えられます。
今後の分析としては、「緩やかな暖をとるジャンル(ホットカーペット・こたつ」と「急速に暖を取るジャンル(ストーブ・ヒーター、電気毛布)」など更なる用途別に分類して分析してみるとより新しい発見がありそうです。
次に、売上規模の推移をチェックしてみましょう。
図2は2020年~2022年の暖房器具の需要時期(10月~12月)の売上を2019年比較で確認したものです。2020年から右肩上がりに推移しており、2022年には、2019年比較で220%を超える売上成長をしております。背景には「気温」「コロナ禍」「EC化」等の影響が考えられます。
寒くなるとこたつが恋しくなる!「体感温度」と「降温商品」
ここで、暖房器具の売れ行きに影響した可能性がある、「気温」について考えていきたいと思います。
皆さんは半袖で過ごせるくらい暑い日が続いた日の翌日、突然半袖では寒くて過ごしづらい日がきて、「今日は温かい物が食べたい…鍋にしようかな…」と思ったことはないでしょうか?誰しも一度は経験するこの暖かい(むしろ暑い)から寒い(冷える)へ気温が変化した時、「体感温度」が購買行動に重要な影響を与えている可能性があります。これはウェザーマーケティングと言われており、温度や気候が体感温度に影響し、最終的には購買行動にも影響するというものです。
体感温度は気温と近い関係ですが、気温だけでなく湿度、風速、熱放射量が含まれます。そのため、冬は気温だけでなく、風が吹くと体感温度は気温以上に低く、夏は風が吹かず直射日光に当たっていれば体感温度は気温以上に感じるのです。
体感温度が低下する際に販売量に影響が出ると言われる商品を「降温商品」と言い、鍋やカイロ、防寒着の需要が高まると言われています。今回の暖房器具ジャンルもまさに降温商品の一つと考えられます。
上記グラフは観測地は東京ですが、2021年を除き、各年一番前月との温度差があるのは【10月】であることがわかりました。先ほどの体感温度からも、寒くなったと感じやすい10月に降温商品の需要が高まるのは、まさに想像通りの結果だったと言えます。
2021年は10月~12月の前月温度差が2020年、2022年と比べ小さいことで、2019年比での市場成長率が2022年に比べ緩やかになっている点も非常に興味深いです。
3大ECモール毎に異なるプレイヤー!こたつジャンルのメーカー構成比をチェック
さてここからは、こたつジャンルの各モールでのジャンル、売上構成の比較をNint ECommerceでチェックしていきましょう。
※データソース「2021年1月~12月/2022年1月~12月」
楽天市場
Yahoo!ショッピング
Amazon
市場全体
各モールでのメーカー構成比を確認すると、それぞれのモールで特徴が見られます。楽天市場は上位TOP5社の市場に占める割合が3モール中一番低く、5位以下のメーカーの売上も高いことがわかります。Yahoo!ショッピングにおいては、2位のD社が市場シェアを減らし、その他(5位以下のメーカー)の構成比が増加しました。Amazonは、上位5社の市場シェア率が高く、50%に迫る勢いです。また、2022年には2021年2位のG社がC社を追い抜き、シェア1位となっています。メーカーから見ると、市場全体での構成比は、D社が2022年にシェア率を落としていることがわかります。各モールで構成比が違う点、さらには上位メーカーが異なる点は大変興味深い結果となりました。
14,000円以上の価格帯の商品が好調?
3モールの中で一番売上構成比の高いジャンルを中心に、価格帯を切り口にNint ECommerceを使い確認いたしました。
※データ期間:2021年10月~12月/2022年10月~12月
2021年度
2022年度
上記の図はメッコチャートと呼ばれるデータ可視化手法で、チャートの中に占める面積で視覚的に対象ジャンルのメーカー・価格帯毎の市場シェアを把握することができます。この価格帯の調査結果から、こたつの主力ジャンルの「高価格化」が起きているようです。
※その他のジャンルも同様に確認することができます。年別の価格帯推移などより詳細が知りたい場合は、株式会社Nintへお問い合わせください。
需要期(10月~12月)売れ筋商品はこたつ・布団のセット!
1位 :長方形リバーシブルこたつ・布団セット
2位 :正方形こたつ敷布団5層床暖房対応タイプ
3位 :長方形手元コントローラータイプこたつ・布団セット
4位 :長方形丸洗い可能、リバーシブルこたつ布団
5位 :長方形リバーシブルこたつ・布団セット
6位 :正方形リバーシブルこたつ・布団セット
7位 :長方形リバーシブルこたつ・布団セット(一人暮らし向け)
8位 :長方形リバーシブルこたつ・布団セット(一人暮らし向け)
9位 :正方形こたつテーブル(本体のみ)
10位:正方形リバーシブルこたつ・布団セット
11位:長方形こたつ掛け布団
12位:正方形リバーシブルこたつ・布団セット(一人暮らし向け)
13位:正方形こたつ掛け布団
14位:正方形リバーシブルこたつ・布団セット
15位:長方形こたつ・布団セット
16位:正方形リバーシブルこたつ・布団セット
17位:正方形リバーシブルこたつ・布団セット
18位:長方形リバーシブルこたつ・布団セット(一人暮らし向け)
19位:正方形リバーシブルこたつ・布団セット(一人暮らし向け)
20位:長方形こたつ布団
こたつは単品需要よりセットでの購入、またリバーシブルタイプが多く、消費者の多様なニーズに対応している印象です。また、一昨年・昨年度話題性のあった、「着るこたつ」は24位と残念ながらTOP20へのランクインはしませんでした(2021年では7位)。しかし全く新しいコンセプトとして2019年より登場した着るこたつが並居る競合製品の中で未だに24位となったことは、今後も注目の一つとなるのではないでしょうか。
2023年こたつジャンルのトレンド予想!
さてここからは、2023年のこたつジャンルの動向を予想していきます。売上は、「商品」×「単価」×「転換率」が基本となりますが、今回「転換率」は前年同率とし、「商品」「単価」「環境要素」で予想していきます。
【売れそうな商品】
2022年の傾向は、こたつ+こたつ布団のセットタイプであること、長方形タイプが上位にランクインしております。また、2021年と2022年の売上成長率が著しい製品を見ると、同様の傾向が見られました。新コンセプトの着るこたつは非常に興味深いですが、製品特性上、一人暮らしの世帯に限られる点は考慮すべき点になります。よって、2023年の売れ筋商品は、「長方形の布団付きこたつ」が継続傾向となるのではないかと予想します。
【価格】
Nint ECommerceを活用して、2020年1月から、2022年12月までのこたつの平均単価を確認したところ、単価の上昇傾向が見られます。売れ筋商品の単価が平均単価よりも高いことから、価格に関しては2022年に比べ「微増となる」のではないかと予想します。
【環境要素】
3大ECモール、こたつ市場を取り巻く環境について検討します。環境要素はプラスに働く正の要素と、マイナスに働く負の要素があると思われますので、それぞれをまとめていきます。
正の要素① EC化率の上昇
こたつジャンルは、家電もしくはインテリアに分類されることが多いですが、2023年8月に経済産業省から発表された電子商取引に関する市場調査によると、2022年の該当ジャンルのEC化率は、家電42.01%、インテリア29.59%であり、2021年から比較しても上昇が続いております。この傾向は2023年も継続するのではないかと予想されます。
正の要素② こたつの所有率
2018年12月に株式会社ウェザーニュースから発表されたこたつの所有率に関する調査によると日本のこたつ所有率は51%となり、49%の世帯が所有していないとのことです。この所有率が上昇する機会があれば、プラスの要素で働く可能性があります。
正の要素③ 世帯数の増加
こたつの所有数は1世帯あたり1台が一般的です。その点では国立社会保障・人口問題研究所が2018年に発表した日本の世帯数の将来推計(全国推計)によると日本の世帯人口は、2023年まで増加し続けるとの予想がされております。このことは世帯あたり1台の購入が通常となるこたつにおいてはプラスの要素になり得ます。
正の要素④ (エアコンに比べ)電気代の安さ
昨今の世情状況から、電気・ガス・水道などインフラ関係の料金も軒並み上昇しています。また、大手電力会社は10月請求分より電気代の値上げを発表するなど、節電意識はより高まっていくでしょう。こたつはエアコンにくらべ電気料金が約1/3程度と節電効果が期待できるため、需要の増加につながる可能性があります。
負の要素① アフターコロナによる影響
2023年はアフターコロナの時代に突入しました。人々の行動量は昨年度に比べ多くなり、フルリモートや自宅でのオンライン授業が減ってきている企業・学校も多いですよね。自宅にいたからこそ、着るこたつやこたつを購入していた層が今年は見込みづらいため、負の要素と言えます。 また、行動量の増加に伴い、オフライン店舗での購入により、ECからの流出も負の要素になりそうです。
負の要素② 物価上昇による買い控え
インフラをはじめとした食品・日用雑貨品の値上げは家計を圧迫します。結果、購買行動にも影響が出る可能性があります。
負の要素③ 家屋の構造上の問題
現在の家屋はフローリングが多いかと思います。フローリング家屋ではソファや椅子を使用することが多く、床に座ることが少なくなります。また、フローリングは畳と比べ冷えを感じることが多いため、こたつの需要へ影響している可能性があります。
負の要素④ 代替商品
近年の暖房器具の技術発展により、こたつ以外の製品でも十分暖を取れることも多く、エアコンやファンヒーターなどの代替商品の存在も負の要素となりそうです。
不確定な要素
こたつは体感温度の差が激しいほど購買行動に繋がりやすい可能性があります。そのため、「暖冬」になると負の要素として、「寒冬」になれば正の要素として作用する可能性があります。
【売上】
商品・価格・環境から判断すると、2023年こたつジャンルは、負の要素がアリながらも前年比110%~120%で推移するのではないかと予想します。
こたつを含む暖房器具市場規模・トレンドまとめ
3大ECモールにおける、暖房器具ジャンルは2022年には、2019年比較で220%を超える売上成長をしており、需要のピークは12月です。需要には「気温」「コロナ禍」「EC化」が影響している可能性があります。中でも、体感温度は購買決定に影響している可能性があり、例年10月が9月との寒暖差が大きくなることも、この時期に需要が高まる要因となっていると推察できます。
さらに、需要の中には、急激に上昇するタイプと、緩やかに上昇するタイプが存在し、「即暖」というが厳しい寒さになるほど重要視される可能性があります。こたつにフォーカスしてみると、3モールで異なるメーカーが上位に存在したり、上位5社の構成比が異なっているなど、特徴はさまざまです。
平均単価は上昇傾向にあり、この傾向は本年も続くのではないでしょうか。売れ筋はこたつと布団のセットタイプであり、その傾向は本年も続くと考えられます。2023年の市場規模は、正の要素・負の要素それぞれがありますが、前年比110~120%となるのではないかと予想いたします。
備考
今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。
- Amazon :空調・季節家電、ラグ・カーテン・ファブリック ジャンル以下
- 楽天 :季節・空調家電、こたつ用布団・カバー ジャンル以下
- Yahoo!ショッピング :こたつ、冷暖房器具、空調家電 ジャンル以下
※詳細ジャンルに関しては株式会社Nintへお問い合わせください。
※当社サービスの売上・数量は推計データです。
参考URL
調査対象:Nint推計データ
Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。
3大モールの防災用品ジャンルに出品されている商品をNint独自の基準で調査対象にしました。
※詳細ジャンルに関しては株式会社Nintへお問い合わせください。
データ抽出期間:2019 年 9 ⽉〜2022 年 12 ⽉(※本稿における Nint 推計データは 2023年9⽉時点のものを使⽤)
【転載・引用について】
■本レポート・ブログの著作権は株式会社Nintまたは執筆者が所属する企業が所有します。
下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記してください。
【出典:Nint BLOG「3大ECモールにおける「こたつ」市場は前年比120.5%で推移」(2023年9月12日公開)】
■引用時のリンク属性について
リリース転載ではなく、記事・グラフ・データの引用の際は、必ず本ブログページのURLを出典元としてご記載お願いします。
※nofollow属性不可
■禁止事項
- 内容の一部または全部の改変
- 公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
- 企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的とした転載・引用
■その他の注意点
- 本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません。
- この利用ルールは著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません。
■転載・引用についてのお問い合わせは下記までお願いいたします。