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まもなく夏本番、ECモールのアイス市場の動向をチェック!’21〜’22夏の人気商品と今年の最新トレンドを比較



【目次】
1. EC市場における、アイス市場の需要推移とその傾向
2. 市場動向の推移
3. 各モールの動向について
4. アイス市場の平均単価(EC市場とオフライン市場の比較)
5. アイス需要時期(6月〜8月)におけるメーカー動向
6. 市場をけん引するショップとその戦略を紐解く
7. EC市場で需要期に好調であったTOP30商品の特徴
8. まとめ




5月に入り、全国各地で記録的な夏日が観測されています。沖縄を除く九州、四国、中国、近畿、東海地方は例年より早く梅雨入りし、夏本番に向けて準備が進んでいます。

梅雨が明ければ本格的な夏の到来です。暑い季節のお供と言えば、「アイス」を思い浮かべる方も多いでしょう。

日本アイスクリーム協会の「アイスクリーム白書2022」※によると、アイスクリームは、好きなスイーツランキングで一位。男性でも95%の方が「好き」「やや好き」と答えるほど、非常に人気のあるスイーツジャンルです。アイスと一言で言っても、その種類は乳固形分の量により4種類に分けられます。乳固形分量の多い順に、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓となります。氷菓は乳固形分が3.0%未満もしくは、シャーベット状のものとなります。


「アイスクリーム白書2022」 日本アイスクリーム協会 2023年1月

また、アイスを語る上で気になる、「ソフトクリーム」との違いに関しては、製品の製法温度の違いによるもので、それ以外の違いはありません。

また、アイスはEC市場とスーパーやコンビニでは、購入価格帯に違いが見られるのも特徴であるとアイスクリーム白書には記載があります。その違いは一体どのくらいなのでしょうか?

EC市場で取り扱われる商品と、スーパーやコンビニのアイス売り場で販売されている商品自体が異なるのでしょうか。商品自体同じで、その販売方法や販売形状(入り数)が異なっているのでしょうか。今回の記事では、その疑問が解決する内容となっております。また、EC市場におけるアイスジャンルの販売のピークは何月なのか、平均単価はどのくらいなのか。2021年、2022年のEC市場での売れ筋の商品傾向を比較しその傾向と、直近の動向に関して調査しました。

1. EC市場における、アイス市場の需要推移とその傾向

<NintECommerceを使った季節トレンドの確認>
EC3大モールにおける、アイスの市場はいつ高まるのでしょうか?3モールの平均売上を100とした季節指数の推移表を作成いたしました。(図1)

図1. アイスジャンル2022年度季節指数表


アイスの市場は、総務省の家計調査の1世帯当たりのアイスクリーム支出金額から確認すると、6月より需要が高まり、8月にピークを迎え、10月からは一気にその需要が低下する傾向が見られます。しかし、EC市場では昨年度は7月がピークで、8月には需要が減少しました。この傾向は2021年から続いています。
※Nint ECommerceを活用すると、商品単位で確認可能です。より詳細に知りたい方はお問い合わせください

オフライン市場(スーパー、コンビニ、ドラックストア等)とEC市場でピーク月が異なる理由として、複数の要因が考えられます。一つ目は、EC市場が基本的に自宅への配達を提供しているため、平均気温が最も高い8月は、製品が溶けるリスクが高くなり、そのリスク回避のためにスーパーやコンビニ、ドラッグストアなどで購入する傾向が高まることです。また別の切り口としては、EC市場の商品単価が一般的なアイス市場の単価に比べ高いことも影響しているかもしれません。例えば、日本において、8月はお中元を贈る習慣があります。このお中元の需要(予約)が7月に入っている可能性が考えられます。

これらの要素を商品単位で分析することで、オフライン市場とEC市場の需要ピーク時期のズレについてより詳しく調査できるかと思います。両市場の共通点としては、12月に季節指数が平均値の100を超えることです。これは、冬でもアイスの需要が一定存在し、その需要はEC市場にも存在していることが示されています。

上記内容より、アイス市場における需要期と最需要時期に関して、以下内容にまとめられます。

<アイス市場の需要期と最需要期>
  • オフライン市場:最需要期8月、需要期6月、7月、9月、12月
  • EC市場:最需要期7月、需要期6月、8月、12月

2. 市場動向の推移

EC市場のアイス市場がピークに達する7月を中心に、2021年と2022年の6月〜8月の期間におけるEC市場のアイス市場規模の変化を調査しました。

Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの3モールにおいて、2023年5月調査時点のNint推計データによると、2022年6〜8月の各種アイスクリーム・シャーベットセットジャンルは前年同時期比で107%へと推移しておりました。これは気温変動が売上に大きく影響するアイスジャンルに関して、2022年の該当期間の平均気温が2021年と比べて、全国的に微上昇したためと思われます。しかしながら、アイス市場は12月にも伸長する傾向があるため、気温との関連性以外についても詳細な調査が必要です。

3. 各モールの動向について

Amazonの売上は横ばいで推移しました。その要因はサブジャンルである「アイスクリーム」の2022年7月・8月の売上が、前年同時比で112.8%、110.6%と伸長したことで6月に大きく苦戦した分をカバーする結果となりました。
販売数量に関しても、「アイスクリーム」ジャンル売上と同じ動きをしております。一方で、別のサブジャンルである「氷菓・シャーベット」に関しては、平均単価の140%伸長したことが、販売不振の売上マイナスをカバーし、結果として前年横ばいで推移しております。

楽天市場の売上はアイスジャンル全体としては、横ばいで推移しました。しかしながら、サブジャンルで確認すると、「ジェラート」「シャーベット」での苦戦が見られました。これらの2ジャンルは、平均単価が上昇する一方で、販売数量は減少し、売上は販売数量の減少の影響でマイナスに推移しました。
特に売上のピークとなる、7月に「シャーベット」の売上が前年同時期比で83.1%と苦戦したことは、該当期間中の売上苦戦の要因となっております。また、「シャーベットジャンル」は該当期間での苦戦の影響もあり、2022年と2021年の年間売上は前年比で81.6%という結果になっておりました。

一方で、Yahoo!ショッピングの売上は急速に拡大しております。サブジャンル全てが好調に推移しており、特に売上の主軸となっている「アイスクリーム、ソフトクリーム」ジャンルに関しては、6月~8月全ての月で前年同時期比で110%を越えており、最需要の7月は前年比170%を越えるなど非常に好調に推移しました。
特筆すべき点は、Amazon、楽天市場の2モールで苦戦した「氷菓・シャーベット」ジャンルが前年を割らずに推移した点になります。
これらの結果から、2022年の年間売上は前年比127.8%と他モールが前年100%を下回る中、好調に推移しました。

モール単位での動向を確認することで、「氷菓・シャーベット」に関しては、販売単価が上昇するも販売数量が減少し、売上創出に苦戦したと考えられます。しかしながら、Yahoo!ショッピングでは好調に推移するなど、モール毎に異なる動きが見られ、非常に興味深い結果となっているかと思います。アイスは気温によって購入される種類が変わってくる傾向があります。
何が起因となるかは諸説ありますが、株式会社ウェザーニューズの調査によると普段の需要では、「かき氷」を代表とする氷菓より、「アイスクリーム」が好まれますが、30℃まで上昇すると、かき氷の需要が3割を越え、34℃となると、その需要が逆転するとも言われております。

例年より暑い夏であった2022年に氷菓需要が低下したこととして考えられるのは

①気温が高すぎるため「溶ける」ことへの心配と「すぐ」食べたい需要が高まり、ECからオフラインへ、より早く近くの実店舗への需要のシフト
②需要はあったが、ECの「品揃え」がそこまで多くなかった可能性
③より「すぐ」消費ができる飲料などへの需要のシフト

などが考えられます。②に関しては、該当期間中に販売実績のあったアイテム数の総数と、売上構成比80%までのアイテム数を確認したところ、売上が集中していた楽天市場でアイテム増加と売上構成80%までのアイテム数の増加が見られました。このことは、アイテム数増加による売上分散が売上創出に影響を与えた可能性を示唆しており、ECにおいても品揃えが需要と言えそうです。

4. アイス市場の平均単価(EC市場とオフライン市場の比較)

EC市場における、アイス市場の2022年6月〜8月の平均単価は3,784円と前年同時期比で109%となりました。 平均単価上昇の要因は高単価商品の売上が好調に推移したためです。

特に楽天市場のアイスジャンルのサブジャンルである、「その他」ジャンルにおいて、ショップAが全体の単価上昇309円の内、19円の単価上昇に貢献しておりました。また、平均単価より450円高い、Yahoo!ショッピングの「アイスクリーム、ソフトクリーム」ジャンルがその売上構成比を4.2%上昇させたことによる影響も大きいです。具体的な商品としては、販売単価5,400円の、昨年度売上規模の小さかった高級チョコメーカーのアイスクリーム詰め合わせセットが前年比370%と大きくその売上を上昇させ、シェア率を2.7%から7.1%と+4.4%引き上げたことが、全体の単価上昇に寄与しました。

今後の平均単価は、当社のAI分析では横ばい傾向との結果となりましたが、原料高・輸送コストの増加により、多くの物価が上昇する世情状況を踏まえると、最終的には微増傾向と予想致します。

次に、オフライン市場のアイス市場の平均単価と比較してみたいと思います。※日本アイスクリーム協会の「アイスクリーム白書2022」によると、オフライン市場における、アイスの1回あたりの購入金額は、150円〜500円が合計の5割〜7割を占めているとの調査結果が出ております。この金額は、アイス1個の単品購入金額と近く、オフラインでは最小単位である「個」で購入されやすい傾向が伺えます。

一方で、EC市場におけるアイス市場の平均単価は、3,784円となっており、その商品は単品商品を複数個にまとめたアソートタイプでの販売が主流となっております。EC市場では、注文から自宅へ届くまでに、必ず配送が発生します。そして、多くのショップが配送料に関して低額もしくは無料にて対応しております。アイスは冷凍商品となるため、その配送コストは通常よりも高くなりがちです。そうした背景もあり、EC市場での平均単価は、オフライン市場の価格と比べ、実に7倍以上の差があります。

5. アイス需要時期(6月~8月)におけるメーカー動向

売上シェア1位のメーカーA社は2022年6月〜8月の売上は前年同時期比で118%へと堅調に拡大しました。

拡大要因としてアイスの最需要期(7月)に市場成長率の114%を上回る前年比136%と成長をした点が成長の要因となっております。この好調要因を支えたのは、販売数の増加・平均単価の上昇と、「お中元需要」の獲得のようです。A社は平均単価が4,300円台~4,650円台の商品構成比が上昇したことにより、平均単価が184円上昇しております。

次に注目すべきメーカーは、B社です。B社は2022年6月〜8月の売上は前年同時期比で162%へと急速に拡大しております。この急速拡大の要因は、Yahoo!ショッピングでの急成長と、最需要期で前年比170%と大幅な成長が挙げられます。 Yahoo!ショッピングでの急成長を支えた要因は、商品数の増加(49品→71品)、それに伴う販売数量の増加が売上の成長へと繋がっております。また中心商品は「お中元需要」のギフトセットとなっておりました。

6. 市場をけん引するショップとその戦略を紐解く

3モール合計で売上シェアNo.1のショップAに関して、その取り扱い商品、戦略を確認いたしました。上位商品にはサーチ広告を入れると共に、福袋として複数メーカーのアイス詰め合わせセット、有名ブランドメーカーのギフトセットの商品が上位にランクインしておりました。

興味深い点としては、「お中元」などのワードはつかっていない点でした。
また、福袋に関してショップA側で詰め合わせを選定・発送する点は、非常に有益であると思われます。これは、消費者側とショップ側の両方にメリットがある施策であると考えます。

消費者側としては、通常購入する総額より安くアイスを手に入れることができる点と、アイスはストックされやすい商品になっているため、ストックすることに対して抵抗が少ない点があります。この点は、「アイスクリーム白書2022」のなかでも、アイスクリームの年間ストック率は実に38.6%との調査結果があります。一方でショップ側のメリットとしては、「ロット」単位で仕入れた商品を、売上状況に応じて調整して出荷することができる点と、一回当たりの購入単価を上昇させる事が出来る点が挙げられます。

7. EC市場で需要期に好調であったTOP30商品の特徴

2021年、2022年の需要期(6月~8月)に売上TOP30 の商品に関して、その傾向(共通点)と違い(2022年のみの特徴)と、現在(2023年5月29日時点)までの5月単月での商品動向をまとめました。

2021年・2022年のアイス需要期に売れた商品の共通特徴
①ギフト向け商品の多さ
└売れ筋商品の多くは、ギフトに適した商品が多数含まれています。特定のイベントや祝日(母の日、お中元、お歳暮など)に関連付けられている商品も見受けられます。
②送料無料商品
└送料無料とアピールする商品が見受けられます。これは消費者へのメリットを提供する販売戦略の一部と考えられます。
③地域性のある商品
└特定の地域に特化した商品やふるさと納税を利用した商品が含まれています。これは地域の特産品に対する消費者の関心を反映しています。
④ブランドや品質のアピール
└ブランド名や高品質を強調する商品が見受けられます。これは消費者が品質や信頼性を重視する傾向を反映しています。
└「ご当地商品」・「有名ブランドの商品」・「ギフト」のワードが見えてきました。

2021年・2022年のアイス需要期に売れた商品の違い
①業務用商品のランクイン
└2022年には、業務用の商品(例えば、大量のかき氷カップやかき氷シロップなど)が含まれ るのに対し、2021年にはそういった商品がランクインしておりません。
②氷菓関連商品の増加
└2021年ではアイスクリームが中心ですが、2022年はアイスクリームに加え、①のような氷菓 にかかわる商品が増加しております。
└2022年は2021年に比べ、「人の動き」が変わってきていることも影響している可能性があり ます。また、気温が高くなったことによる氷菓需要も窺える内容となっています。

直近(2023年5月29日時点)の特徴
直近の特徴として目立つ特徴はありませんでした。昨年同様引き続き、有名ブランドの商品が目立つ点、父の日・誕生日などのハレの日に向けたギフト需要を強調する商品がみられましたが、大きな特徴差は、見られませんでした。

8. まとめ

EC市場におけるアイス市場は、7月にピークを迎えます。その中心商品は、3タイプに分類され、日用消費需要・お中元などのギフト需要・ご当地商品の取り寄せになります。日用商品・お中元需要に関しては、有名ブランドの商品が主力となっており、金額こそ異なりますが、販売商品はオフライン市場と大きな差はありませんでした。ご当地商品に関しては、有名な商品が好まれる傾向がありますが、素材を生かした製品(高品質)の需要もあります。

気温による影響が大きいアイスジャンル、本年は例年より暑い夏と予想されており、人の動きも活発になります。氷菓のかき氷が再び上位にランクインするのか、それともギフト需要・日用消費需要のアイスクリームが上位を独占し続けるのか、今後の動きが気になるジャンルです。





作成者
山本 真大(Yamamoto Masahiro, Marketing Div.マーケティングUnit)
編集者
Nint Blog 編集長 加藤 洋平(Kato Yohei, ERP Div.カスタマーサクセスUnit)



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