ECサイトの売上を伸ばす8つの販売戦略|具体的な施策と注意点
そこで今回は、ECサイトの立ち上げや改善に取り組む企業のEC担当者の方に向けて、EC事業における販売戦略の基本的な考え方や、具体的なノウハウを解説します。今後、サイト構築やサイト運営に携わる際は、本記事の情報を活用ください。
目次
EC事業における販売戦略の基本的な考え方
ECサイトの売上アップに必要不可欠な要素である「売上の算出方法」とEC事業の基本戦略である「ポジショニング」「ターゲティング」について紹介します。
ECサイトの売上の算出方法
ECサイトでの売上は以下の算出方法で求めることができます。
売上=集客×購入率(CVR)×顧客単価
売上アップのために必要なことは、「集客」「購入率」「顧客単価」を高める施策だと分かります。「集客」はECサイトを訪問したユーザー数、「購入率」はそのなかで購入した人数、「顧客単価」はユーザー1人あたりの1回の購入金額を表します。
EC事業の基本戦略
EC事業の基本戦略は主に「ポジショニング」と「ターゲティング」の2つです。自社の市場におけるポジションを明確に定めることと、想定される利用ユーザーを絞り込むことが大切です。
ポジショニング
ポジショニングとは自社が顧客のどうような悩みを解決し、価値を提供するのかを定め、さらに自社製品を使うメリットを認知してもらう活動です。まずは競合サイトの分析を行い、自社の強みを生かしたポジションを確立しましょう。
EC事業を成功させるためには、競合他社と差別化させることが重要です。競合サイトの分析により、市場を理解した上で、自社の独自の強みであるUSPを考えます。
USP(Unique Selling Proposition:ユニーク・セリング・プロポジション)とは、自社あるいは自社製品が持つ独自の強みという意味です。例えば、商品のラインナップが豊富、配達スピードが速い、サイズ交換に対応しているなどが挙げられます。
ターゲティング
ターゲティングとは、製品やサービスを売るターゲットを絞り込む戦略です。ターゲットを絞ることで、コストの削減や成約率の向上が実現します。
そしてEC事業においても、まずは自社サイトを利用するであろう具体的な顧客層を想定します。ターゲットの年齢層、人物像などにより、有効な施策や販売プロセスは異なるからです。ターゲティングにより大まかな顧客層が想定できたら、次はペルソナを設定します。
ペルソナはターゲットの顧客層に属する、より詳細でリアルな人物像のことで、設定すると顧客目線の戦略が立てやすくなります。例えばターゲットが20代の女性ならば、ペルソナは24歳、女性、東京都在住、一人暮らし、看護師、年収400万円というように設定を掘り下げます。
EC 販売戦略の売上を伸ばす8つの販売戦略
Webマーケティング業界は変化が激しい世界なので、効果的と思われる戦略が見つかればどんどん実践されます。ここではその成功事例として、8つの販売戦略を紹介します。
ECサイトのSEOを強化
検索エンジンの最適化により、自社サイトを上位表示させ、検索エンジンからの自然流入を確保します。行う作業は、HMTLタグの最適化、被リンクの獲得、レスポンシブ対応などです。
これにより中長期的な認知の拡大やアクセス数の向上につながりますが、SEOは効果が出るまでに時間がかかるのが特徴です。EC事業の立ち上げと同時に取り組み始めるのがコツです。
SNSの活用
SNSには年齢や性別などの利用者の属性が登録されているので、ターゲットを絞って広告を配信し、ECサイトの集客力を高めることができます。近年はSNSをコミュニケーション目的でなく情報収集に使う人もいるので、情報発信メディアとしての影響は大きいです。
また、公式アカウントでの情報発信はブランドの認知度向上や新規顧客の獲得にもつながります。その他、既存顧客向けにクーポンをプレゼントしてリピート購入を促すのもおすすめです。
マーケティングオートメーションの導入
マーケティングオートメーションとは、データ集計や営業などのマーケティング活動の一部を自動化し、業務を効率化する仕組みです。また、顧客一人ひとりの行動履歴に合わせたメルマガ配信やプッシュ通知を行い、購買意欲を刺激することも可能です。
EC事業は人手不足の場合が多く、顧客満足度アップに向けた業務に手が回らないこともありますが、マーケティングオートメーションなら集客や営業の手間を省けます。
オウンドメディアの運用
ECサイトは、既に商品購入を検討中の人に向けたネットショップなので、潜在顧客の獲得は苦手です。そのため、ブランド力に劣る中小企業は検索エンジンからの流入は見込めません。
この課題を解決する手法として、ECサイトのオウンドメディア化があります。サイト内に読者の悩みや疑問に答える記事コンテンツを充実させ、オウンドメディアとして情報発信することがブランディングになります。そうすることでサイトに対する信頼性が向上し、潜在顧客の購買行動につながります。
また、ブランディングができれば楽天市場やAmazonで行われる価格競争から抜けられます。
オムニチャネルの導入
オムニチャネルとはオンラインとオフラインを区別せず、あらゆる顧客との接点を全て統合することです。つまり、実店舗(オフライン)やECサイト(オンライン)などの販売チャネルを問わず、顧客側は常に同じ価格と利便性を得られ、販売店側も同じ利益を受けられます。
具体的には、顧客情報や在庫管理、ポイントなどがオンライン・オフラインの区別なく統合されています。ユーザーフレンドリーなマーケティング手法なので、顧客の囲い込みやリピーター化に有効だといわれています。
EC事業の海外展開
越境EC(海外向けの商品販売)は、低コストで販路拡大と海外の新規ユーザー獲得を狙えるのがメリットです。インバウンド需要以上のビジネスチャンスが潜んでいるともいわれています。
デメリットは言語、決済方法、物流などの諸問題にかかる手間です。販売する商品の説明やサポート対応では正確な翻訳が求められますし、クレジットカード以外の決済方法の導入、関税などの知識も必要になります。
アプリの開発と配信
公式アプリ(ECアプリ)の開発はハイコスト・ハイリターンといわれます。ECサイトと同様の販売機能、アプリ上でのクーポン配布、プッシュ機能でのお知らせ配信などが可能になるなど、ユーザビリティの高さは魅力です。
一方で、開発コストとノウハウ、OSアップデートへの対応は必要ですし、そもそもユーザーがダウンロードする保証もありません。開発にあたっては、ユーザーに使用上のメリットが伝わるようにしましょう。
ECモールの活用
顧客とのチャネルを増やす目的で、ECモール(国内では楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなど)を活用するのも良いでしょう。このようにECモールを使ってECサイトを運営する方法はモール型ECと呼ばれます。
ユーザーの中には検索エンジンを使わずモールで検索する人もいるので、出店することで新規顧客獲得の機会になります。ただし、出店コストと労力が必要なので、社内のリソースは確認しておきましょう。
Nint ECommerceの導入
Nint ECommerceは、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングを対象に、市場・競合の売上を分析できるリサーチツールです。市場のトレンド、売れ筋商品、競合ショップの動向を分析することで、ECサイトの販売戦略に反映できます。機能は「業種分析」、「ショップ分析」、「商品分析」の3つです。
1.業種分析
自社が参入する予定の市場で何が売れているかがわかります。売りたい商品の市場での流通額の推移や売上金額、競合となる企業などを把握できます。
2.ショップ分析
競合企業の人気商品の売上状況について日別の売上や月次の売上がわかります。また、競合の広告施策まで把握できるので、売上が安定している企業があれば自社の販売戦略の参考にできます。
3.商品分析
競合となる企業名と商品キーワードで検索すると、売上指数やモール上のランキングが確認できます。売れ筋の商品が把握できるので、商品企画や仕入れで活用できます。
参考URL:https://www.nint.jp/ec/
ECサイトの販売戦略を実施する際の注意点
ここまでECサイトの販売戦略について解説しましたが、実施する際の注意点があります。赤字や機会損失につながるリスクもあるのでご確認ください。
実施する施策の費用対効果を考慮する
販売戦略を立てて、施策を実施するには費用がかかります。そのため、実施した施策に見合った結果を期待できるかどうかについて事前に仮説、検証する必要があります。施策を実施しても、売上が向上しなかった場合、赤字になる可能性もあるのです。例えば、先述したオムニチャネルは初期コストがかかるうえ、即効性のある販売戦略ではありません。現在のチャネルが1つしかない場合は、チャネルを増やすための資金が必要です。また、元から複数のチャネルがあったとしても、顧客情報、在庫管理、ポイントなどのデータを全てのチャネルで連携させるシステムを開発する必要があります。
さらに成果が出るまではPDCAを回し続けることになるので、ブランド力が高まり、リピーターがつくまで資金が保つかは確認すべきポイントです。
顧客のリピーター化と囲い込みは大きなメリットですが、莫大な初期費用に見合う戦略なのか、慎重に判断しましょう。
サーバー環境を整えておく
何らかの施策が成功してサイトへのアクセスが一気に増えた場合、サーバーがダウンして販売機会を逃すおそれがあります。例えば、キャンペーンの実施やタイムセールなどは一時的にアクセスの集中が予測されます。サーバーダウンは企業イメージや信頼関係の悪化につながりかねないので、アクセスの増加に耐えられるよう、事前にサーバー環境を整備しておいてください。
対策例としては、テスト環境下での大規模な負荷テスト(有料)があげられます。システムのボトルネックを見つけ、効率的に自社ECサイトの限界を確認することができます。
ECサイトの成功は販売戦略にかかっている
今回はEC事業の基本戦略や具体的な販売戦略、実施する際の注意点について解説しました。販売戦略にはさまざまな施策があり、それぞれが大きな利益をもたらしますが、コストや人手がかかるものもあります。
あまりコストがかけられない場合は、SEO対策やオウンドメディア運用から始めてみてはいかがでしょうか。時間こそかかりますが、将来的なブランディングや訪問数の増加につながります。自社の資金や課題を把握した上で、適切なマーケティング施策を実施してください。